「稟くんお風呂が沸きましたよ。」


夕飯が終わり自室で買ってきたばかりのCDを聞きながら雑誌を見て寛いでいると、楓がお風呂の準備が出来たと伝えてきた。
「お、もうそんな時間か。」
「はい。今なら湯加減も丁度良いので良かったら入って下さいね。」
「風呂か・・・・どうするかな。」


「楓は先に入るのか?」
「私は、まだ夕飯の片付けがありますから。」
「プリムラは?」
「今はリビングでTVを見てますよ。何時もの、アニメが放送しているので。」
「ん?今の時間でか。」
そういえばプリムラの最近見ている魔法少女のアニメは、もう放送は終了してる時間のはずなんだが。
「今日は、他の番組の延長で放送が遅れたみたいなので、今見てるんですよ。」
「そっか・・・・じゃ、仕方がないな。お言葉に甘えようとしますか。」
そう言い俺は、風呂場へ向かおうと立ち上がるが、扉を抜ける途中で俺の袖がくいっと引っ張られる。
ここには、俺と楓しかいない訳でそうなると引っ張てるのは自然と一人しか思いつかない訳で、
「なんだ楓。」
引っ張ってる張本人の方を向くと顔を赤らめて俯いていた。
「あの・・・・片付けが終わったら、私も一緒に入っていいですか?」
「え?」
楓の言葉が俺は一瞬理解出来なく、反応が出来ないでいる。
そして言葉の意味を理解したと同時に顔が真っ赤かになった。
「な、か、楓!?言ってる意味分ってるのか!」
「はい。たまには稟くんと一緒に入りたいと思ったんですけど・・・駄目ですか?」
俺に断れると思っているのか、目が不安で揺れている。
正直この顔は卑怯だよな、絶対断れない。
好きな女の子ならなおさらだ。
俺は恥しさを誤魔化すために頭を掻く。
「・・・分ったよ。じゃ先に風呂には入ってるから早めにな。」
「はい♪」
うわぁ~すっごい嬉しい顔しちゃって。
ま、楓のこんな顔が見れるなら別に一緒に風呂ぐらいたいした事じゃないか。
部屋を出て行く楓だが突然振り向き俺にこう言った。

「あ、稟くん。稟くんの体は私が洗うんですから、勝手に洗っちゃダメですよ♪」

そう最後に言い残し下へ降りてゆく。
いや、そこまでしますか楓さん。
若干今後の展開を不安に思いつつ、だけどどこか期待をした足取りで風呂場に向かう俺だった。
最近楓に奉仕されるのを喜んでる自分がいます。

カポン・・・・

軽く桶でお湯を掬い汗を流した後、湯船に浸かりゆったりとしている。
「楓とお風呂か・・・・」
楓とお風呂なんて子供の時以来だな。
少し懐かしくも感じるが、今は子供と違うからな・・・・一緒にお風呂なんかに入ったらどうなる事やら。
楓もそこん所は理解はしているだろうが・・・・もしかして、誘われてるとか。
・・・・・なんてな。
湯船に顔を半分ほど埋めて、悶々とした事を考えていると脱衣所の扉が開き、楓が入って来た。
「あの、稟くん。お待たせしました。」
「あ、ああ。」
そう言いながらいそいそと服を脱ぎ始める。
風呂場にある、ガラス越しに徐々に楓の肌が見えてくるのが分かる。
そのシルエットを見ているだけで恥ずかしさが増してきて段々顔が紅潮してくる。
恋人になって肌を重ねる事が多くなったとはいえ、やはり好きな子の裸を見るのは照れるというものだ
服を脱ぎ終えた楓が、ゆっくりとドアを開き風呂場の中に入ってくる。

「なんかこうゆうのは恥ずかしいですね。稟くん。」

いや誘ったのは楓さんなんですけどね。
頬を染めながらそう言う楓に、心の中で突っ込みを入れながら楓の裸体を眺めている。
体にはタオルを巻いているが、それだけでも十分綺麗だった。
楓の体を見て俺の熱が高まるのを感じてるのは、決して湯船に浸かってるからじゃないだろう。
「それじゃ稟くん。ここに座って下さい。」
恥しそうに、椅子を差し出す。
「え、あ・・・うん。」
俺は素直に従い、湯船から出て椅子に座る。
そして、

ぷにっ

「はう!?」
背中に柔らかい感触がして、思わず俺はすっとんきょんな声をあげてしまう。
この柔らかい感触は、やはりむ、む、胸だよな。
「か、楓さん一体何を!?」
「気持ち良くありませんか?」
恥しそうに俺にそう聞いてくる。
いや、気持ちはとても良いのですが良すぎるのがダメ過ぎと言うかなんて言うか・・・・・・・・いや、それよりも!!!
「気持ちはとても良いんだけど、何でこんな事を?」
いくら楓でもこんな事を自分でするような娘じゃなかったはずだ。
思いつくとしたら約一名なんだが、
「あの・・・・亜沙センパイが、胸などで体を洗うのが男の方は好きだと言ってましたので・・・・・」

やっぱり、あなたでですかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!

「私は恥ずかしかったのですけど、稟くんが喜んでくれるなら私は構わないですし。」
あの人は絶対分っててやってるんだろうな・・・・・・
「いや、楓さん。あんまり亜沙センパイの言う事を一途に聞かなくても良いと思うのですが。」
そうじゃないと、俺の身が持ちません。
「ですけど、稟くんが喜んでくれるなら私はそれが最大の喜びなんです。それがどんな事でもたとえ亜沙センパイに言われた事でも、稟くんが喜んでくれるなら私は何でもできるんです。・・・・・・・・・・もしかして、稟くんはこうゆうの嫌いなんですか?」
俺がこうゆう行為が嫌いだと思ったのか、まるで捨てられた子犬のような悲しい眼をしている。
さっきの言葉と合してもこの視線攻撃とのコンボは、超必殺クラスだろう。
樹ではないがこれで、『嫌』なんて言える奴は男じゃない。


「嫌じゃないよ。」
俺はそう断言した。
「本当ですか?」
「ああ。」
「本当に本当にですか?」
「ああ本当だよ。むしろ嬉しいし。」
「稟くん♪稟くん・・稟くん・・・・・・・」
そう俺の言葉を確かめる様に俺の名前を呼び続ける楓。嬉しそうに俺の体に抱きついてくる。
いや、喜んでくれるのは素直に嬉しいのですけど何と言いますかそんなに体を押し付けてもらうと、女性特有の柔らかい感触が背中全体に感じましてね。その・・・・・・約一部分がとても危険な状態になってます。
「あの・・・楓さん。そろそろ離れてくれると、大変有難いのですが・・・・」
最初俺の言葉に一瞬悲しい表情になる楓だが、照れる表情を見て直ぐに理由が思い立ったのか逆に顔を赤らめた。
そっと確かめる様に、脇から覗くと更に頬を赤く染め上げる。
「・・・・・・・元気になっちゃいましたか。」
「・・・ちゃいました。」

ま、この状況でこうなるのが健全な男の証拠なのです。
なんとか気を沈めて、落ち着こうとするが気を落ち着けば落ち着くほど楓の体温を感じて全く静まる気配なし。
どうしようかと本気で悩んでいると、俺のものに柔らかい感触が伝わった。

「か、楓!?」
「り、稟くん苦しそうです。わ、私がしますから、こ、ここは私にまかして下さい。」
健気に奉仕する楓の甘い要求に俺は逆らう事など到底出る筈もなかった。

そして、俺達がお風呂から出る事にはすっかり逆上せていた。
何時もより火照った体が先程の行為の激しさを物語っていた。
「ちょっとやり過ぎましたね。」
「そうだな、久々だったしな・・・・少しやりすぎたかな?」
「はい、稟くんのがお腹の中に一杯あります。」
俺の言葉に羞恥に頬を染めながらも含みを入れて楓は斬り返してきた。
その返答に俺の顔も真っ赤になっているだろう。
気まずそうに目を逸らすが決して悪いものではなくとても心地が良い雰囲気だ。
大切な人とこうしていられるの事が本当に嬉しい。
「り、稟くん。冷たいお茶でも飲みますか?」
「あ、ああ。そうだな。」
俺達は体の熱を冷ますために、リビングへと続くドアを開けた。
が、

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

なぜか、リビングの中の空気がとても重い気がするのは気のせいでしょうか?
楓もその空気を感じたのか、どこか顔が引きついている様に見えた。
その重い空気の“元”に視線を向けた。
そこには、いじけてソファーに体育座りをする異常~に暗い空気を悶々と出しているプリムラがいた。
俺達は、声をかけるかどうかを戸惑ったが無視する訳にもいかないので、恐る恐る声をかけた。

「おい、プリムラ・・・・・」
「ねぇ、リムちゃん・・・」

俺達の声に振り向いたプリムラは今まで見た事がないぐらい怒っていた。
頬もまるで焼いた餅の様にぷっくらと膨らんでるし、一体何があったのだろうか。
プリムラの怒る理由が分からない俺達は戸惑っていた。
「プリムラどうしたんだ。そんなむくれた顔して。」
「・・・・・」
「プリムラ?」
「・・・・・・・・」
「プリムラさーん。」
俺の再三の問いにも、むれたままでこっちを見ている。
そして、やっと小さく口を開く。
「・・・・・・・・・るい」
「ん?」
「楓とだけお風呂入ってずるい・・・・」

「「え」」

ピシッ

プリムラの発言に俺と楓は固まった。
「私だけ仲間外れ。」
「え、いやリムちゃん。そう言う事じゃなくてですね。えっと・・・・」
必死に言い訳をしている楓だがプリムラからの更なる爆弾発言が来る。
「でも、お風呂から楓の嬉しそうな声聞こえた。」
「え!」
「『いっちゃう』とか『稟くんの気持ちいです』とか聞こえた。二人だけ楽しそうだった。私もやりたい。」
「は、はう~~~~・・・・」
超特大の爆弾発言で耳まで真っ赤になる楓。
まさか聞こえていたと言うのか。
風呂場の声はよく通るからなー聞こえてもしょうがなくはないが・・・マジで?
しかし幸いプリムラは只二人で仲良く風呂に入った程度しか思ってないのが幸いだ。
このままじゃ地雷を踏みかねないし・・・ここは、仕方がない。
「分ったよ。プリムラ、今度は俺と一緒に入ろう。」

「え!」
「え?」

俺の言葉に二人は反応をする。
楓はなんだか固まっているが、プリムラの方は期待した目で俺を見ていた。
「本当、稟。」
「あ、ああ。その・・・・うちな。」
「うん!」
嬉しそうに頷く。
「だから、プリムラも今日は一人でお風呂に入ってこい。な?」
「うん。分った。稟、約束。」
「あ、ああ。分ってるよ。」
きっちり指切りまでして約束をした俺は、どこか喜び気味に風呂場に歩くプリムラを見送った。
取りあえずプリムラの機嫌が直ったのは良いとして、なんかとんでもない事を約束した様な気がする。
ま、プリムラ相手にそんな気は起きるほど俺はそっち系じゃないし風呂場での事は適当に流して置くか。
プリムラも忘れくれれば・・・さい・・・わい?
言葉が止まり、後ろから感じる先程の数倍の気配を感じた俺はゆっくり後ろを振り向くとそこには、

「ひっ!?」

なんだか黒いオーラが見える楓さんがこちらを睨んでいた。
思わず、上ずった声を上げる俺。
そんぐらい怖かった。

「稟くん・・・・良かったですね。リムちゃんとお風呂に入れる約束出来て・・・・・・・・」

明らかにお風呂の語呂だけを強調してるのが更に恐ろしい・・・・・・・しかも顔は笑顔だが目が笑ってないのが二重で怖い。
俺の顔に冷や汗が浮かぶ。
「あの楓・・・さん、これはですね仕方がなく、決して下心があったわけでもなく狙ってたわけでもなくですね。あの場はこう言うしかしょうがないと言いますか、その・・・・・・」
必死に言い訳を考える俺だが、楓からの黒いオーラは消えない。
俺ってばもしかして絶体絶命?
「分かってますよ稟くん。稟くんは優しいですから・・・でもリムちゃんに何かしたら分かってますね?」
「もちろんです・・・肝に銘じておきます」
「取りあえず部屋に行きましょう。そこでゆっくり話がしたいですから」
「はい」
俺はさながら、死刑囚が死刑台に上がるがごとく重い足取りで部屋に連行された。
プリムラが風呂から出て来るまで散々楓に言われたがぶっちゃけ、この時何を話したか覚えてない。
考えるだけでも恐ろしい・・・・・・
そして、次の日の俺は、精も根も尽きてげっそりとやせていた。
やはり、人間あれだけ量を一晩で出すのは無理なんですよ。
プリムラとの約束を果たす時にも、あるかと思うとちょっと鬱に入りそうだった。

今回の教訓:軽はずみな約束は身を滅ぼす

~End~



***後書き***
昔書いたものを再アップしました。
タイトルも前と変わってたりしてます。
風呂場ネタの楓メインストーリーです。
少しプリムラもいますが…
18禁物を書くつもりがもうないので、サイトを簡略化した時に発禁物は全部カットしたのでHシーンをカットしてます。
基本の話は前回の時と変わってません。







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