12月31日。

世間では大晦日と呼ばれ初日の出を拝める為に富士に昇ったり、同僚と一緒に夜通し忘年会と年末を楽しむのがだろうが、俺としてはあまりそのような行事にはあまり関心がなく、仕事に就いてからは毎年自宅で寝てるか年明けまで仕事をしてるかのどちらかだったのだが今年は少しだけ違っていた。
ソファーに腰掛ける俺の股の間にちょこんと座り猫の様にじゃれてくる巷で人気絶頂のSランクアイドル、星井美希と言う一人の少女と一緒だと言う事だった。

「ハニ~~♪ミカン食べる」
「あ、ああ」
「分かったの!はい、あーん」
「あ、あーん」

年末年始恒例のおめでたい衣装やセットをした会場で有名な司会者が仕切る番組を見ながらさっきから美希はさっきからしっきりなしに俺に甘えてくる。
あ、甘い甘過ぎる……
嬉しくはあるけど、この歳になってまるでバカップルもよろしいベタベタぶりは正直恥ずかし過ぎる。
アイドルである彼女と表立って付き合えないため、人目のある所では控えて貰っている分二人っきりになると美希の甘え癖は1.5倍増しなのだ。
妙にむず痒い感覚と体中が甘くなってしまった様な錯覚を覚えるのはきっと気のせいではなく口の中のミカンの味だけでもないと思う。
今年の終わりまであと、一時間弱……もしかして、ずっとこのままなのだろうか?

「なぁ美希。流石にこの態勢は止めないか?恥ずかしいんだが……」
「むー!駄目なの。ハニーが人前は駄目だから二人っきりの時は好きなだけ甘えて良いから我慢してってハニーが言ってたんだよ。忘れちゃったの?」
案の定俺の提案は呆気なく却下され、不満を募らせて怒る仕草も何処か可愛いかった。
「いや、覚えてはいるけどこのままだとちょっと男として色々と問題が……」
「問題…って何?」
不思議そうに首を傾げ俺を見つめるその瞳は純粋そのもの。
体の発育が同年代よりずっと早い美希だけど心はまだ未成熟、高校生成り立ての少女が男の摂理なんて知る訳もないよな。
胸はこんなに大きいのにな………発育が良いのも考えものだ。
「…何でも無いよ」
「変なハニー。…あはは、可笑しいの~~。ねぇねぇあの芸人さん面白いけど誰か知ってる?」
「ん?ああ、あれはな…」
俺の内心を知る由もない美希は呑気に芸人の漫才を見て笑っていた。
全く呑気なものだ。
触れあう肌から鼻孔に香る甘い香り。
そして、俺の眼下に見える未成熟でありながら豊かな体。
特にその胸……男としては気にしない奴は居ないだろう。
この状況でも必死に劣情を抑える俺の精神力を皆は是非とも賞賛して欲しい所だ。
しかし……。

「あはははは」

触りてー。
動く度にプルプルと揺れ眼下に聳える星井美希と言う甘い果実はとても美味しそうだ。
ごくっ…
だが、付き合ってるなら少しぐらいは……
そう思うと理性の枷が緩くなり無意識に美希の体に触れようと手が動いた。
しかし……

「あ。そうだ、ハニーに聞きたい事があったのー」
急に振り向かれ慌てて手を引っ込め平静を装う。
「っ!?……俺にか?」
「どうしたの、ハニー?」
「な、何でも無いぞ。うん、何でも無い」
危なかった…相手はまだ未成年で中学生だぞ?
劣情に流されて手を出したらそれこそ最悪だろう。
「おほん…で、なんだ聞きたい事って」
ワザとらしく咳をして誤魔化す俺を不思議そうに見ながら続きを話してきた。
「あのね……そのハニーは、今は別の新しい子のプロデュースしてるん…だよね?」
「ああ。そうだな……」
あくまで765プロでの俺の仕事は新人アイドルを発掘し一人前にまで育てるのが役割、故に俺の担当のアイドルのプロデュース期間は約一年。
既に俺の手を離れ、高みへと昇った今の美希には仕事は別のプロデューサーが担当しているのだ。
最もそのプロデューサーも名前だけで基本は、美希に処理できない雑用などのサポート程度だが。
新しいアイドルに先輩として気にしてるのだろうか…それなら、いい機会だし話しても良いかもしれない。
「今の担当の子は、元気一杯でな。直向きな性格が見ていて和むし……」
「ぐすっ……」
「って、おい、美希!?な、何で泣くんだ」
担当アイドルの事を知りたいと思った俺は率直に答えていたのだが何故か美希の口から嗚咽が聞こえてきた。
「だ、だって。ハニー……新人の娘と話してるの凄い楽しそうに見えるんだもん。最近も事務所でも会ってもまともに話せれないし」
「美希………」
「ハニーが美希のプロデューサーの時は一杯迷惑かけちゃったし、美希なりに頑張ったつもりだったけど……やっぱり駄目な美希より他の娘の方がハニーは良ったのかなって」
確かに……美希と出会った頃は、本当に色々とあった。
その場の気分で仕事をする当時の美希はドタキャンとか当たり前。
放送中に寝る事もあったしその度のフォローはかなり滅入っていたのも事実だった。
大変では無かったと言えば嘘になるがでもそれをどうにかするのが俺の仕事だ。
それに俺は……
「大変だったけど、そんな事美希が気にする必要はないぞ」
「でも……美希じゃない子の方をプロデュースしてる時の方が楽しそうだったの。ハニーは…美希をプロデュース出来て良かったって思ってる?」
不安な気持ちを表す様に目に一杯の涙を溜めて俺を見つめてくる。
その答えは考えるまでもないだろう。
「そんなの決まってるだろう」
「…え?」
「俺は美希と会えてよかったよ」
「……本当に?」
「ああ。最初の頃は確かに褒められるような態度ではなかったけど、今日まで美希がどれだけ頑張ってきたは近くで見ていた俺は誰よりも知ってるし、今の美希は俺の一番自慢のアイドルだよ」
「ぐすぅ…良かったの~~」
「お、おい。美希、何で泣くんだ!?」
いきなり泣き始める美希に俺は慌てて取り繕う。
何か不味い事でも言ったのだろうか。
「ち、違うの。嬉しくて……本当は美希なんかプロデュースなんてしたくなかったんじゃないかって不安で…だから……何時も外では素っ気ないし他の娘と仲良くしてるの見てると美希の事忘れそうで怖くて……」
「美希……馬鹿だな。俺が美希の事、忘れる訳ないだろう」
「で、でも。前みたいに全然構ってくれないんだもん」
「そ、それは他の娘のプロデュースがあるからな」
いや、嘘か。
本当は、自分の気持ちを抑える為にわざと距離を置いてるんだ。
「と、兎に角。俺はちゃんと美希の事好きだから、だから泣くな」
「は、ハニ~~」
泣きじゃくる美希の背中に腕を回し抱きしめ震える華奢な体を優しく撫で続けた。
そして、暫くそのままでいると泣き疲れたのか美希は俺の膝を枕代りにして、眠ってしまった。
「すぅー……」
可愛い寝息をたてる美希の綺麗な髪を撫でるとくすぐったい様に顔を緩ませる。
今日も仕事あったし……普段からの疲れも溜まってるのかもしれないな。
それにしても……プロデューサーとしての線引きが美希をここまで思いつめていたなんて知らなかった。
せめて18歳になるまでと我慢をしていた事が逆に美希を辛い目にあわせていたかもしれない。
「ん…ハニー。美希の事……嫌いにならないで」
「美希……ごめんな」
美希の泣き顔を見るぐらいならば……少しぐらい自分に素直になろうと思った。

~End~



***後書き***
アイマスSS物。
やっぱり美希は可愛いと思う。
もっと、アイマス物書きたい所ですね。
本当はもうちょい長く書きたいんだけど以外にアイマス物は難しいんですよね……






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