※稟が女性になったらと言うifの話です。※

~あらすじ~
プリムラの暴走で眠った楓を助けるため記憶世界の中に入り、無事それをすべて解放した稟。(詳しくはReally? Really! をプレイ)
だけど、プリムラの魔力の影響はまだ残っていたのはだれも知らなかった。
そして、ある朝ついにそれが現実となる・・・・・・

ぶっちゃけ、思いつきで書いたネタです。女の稟も良いかなっと。(;^ω^)

楓の深層世界の一件から、随分経ったある日の事。
窓から差し込む穏やかな朝の陽気に、気持ち良く眠っていた。
もう暫くしたら何時ものように楓が来て、俺を起こし何時もの騒がしくもあり穏やかな日が始まる……そのはずだったんだけどな。
今日は…いや、今日から少しだけ違っていた。

がちゃ…

「稟くん。朝ですよ・・・・・起き・・・てくだ・・・・あれ?」
不思議な声を発する楓に眠っている俺は気づかなかった。
緊張した面持ちで恐る恐る毛布を取り何かを確認する。
俺は毛布を取られた事で少し寒くなり思わず背を曲げ膝を抱える。
それにより、強調される“あれ”。
思わず楓は目を見開き、そして……大絶叫が朝の芙蓉家を揺るがした。

「き、きゃぁーーーーーーー!!!!」

「わ!な、なんだ、どうした!?」
楓の叫びに俺は思わず飛び起き、辺りを見渡すと傍にあり得ない物を見るような目を向け微かに体を震わせる楓が床に座り込んでいるのが分かった。
「あ…その……えっと」
「どうしたんだよ楓?」
「稟くん…ですよね?」
「はぁ?何言ってんだよ。俺は俺だろう」
「そ、そうですよね…私、夢を見てるのかな」
楓の意味不明の言葉に俺の頭に?マークが浮かぶ。
だけど、俺以上に楓の頭にも?マークが浮かんでいるのが分かっていた。
・・・何なんだ一体?
本当に意味が分らない。
しかし、それにしてもなんか異様に肩がこって重い気がした。
それに、胸も異様に重い……気のせいか?
とりあえず凝った肩を解そうと手を動かすが、胸辺りに腕が来たときになんとも柔らかい感触が二の腕に伝わる。
不可思議に思い視線を下に向けると、そこには……
「……胸?」
そう男の俺にはあり得ないぐらいの発育している胸が見えた。
そのあり得ない物体に数秒間、固まり目を擦りもう一度見る。
俺はまだ夢を見てるか?
男の俺にこんな立派な胸なんてありえるあけないじゃないか。
思わず触ってみると、とても柔らかく気持ちが良い。
最近の夢は、妙に現実的だよなーとちょっと関心。
「……」
しかし、触れれば触れるほど感じる感触は夢とは思えない……だが、これは夢だ、夢に決まっている。
そう思いこもうとしても俺には、これだけは確認しないといけなかった。
「楓、鏡持ってるか」
「あ、はい。ちょっと待っててくださいね」
慌てて出ていきそれと同じぐらい慌てた調子で戻ってきた楓の手には愛用している手鏡があった。
それを受け取り、恐る恐る覗きこむ。
顔は何時もの俺だと思う。
なのだが、短かった髪は腰に届くほど長くなっており妙に艶がありサラサラしていた。
輪郭も男らしい強張った骨格ではなく僅かな曲線を描き頬に触れると楓に触れている時のような柔らかさがあった。
これはどうみても……
「楓……お前から見て俺は男か?女か?どっちだ」
「えっと………」
言い辛そうに口籠る楓の微妙な反応で最悪な方で的中している事が分かる。
付き合いが長いのも考えものだな……しかし、これで確定だな。
うん、これは現実だ。
現実………な訳あるか!!
「すまん!もう一度寝るわ。こんなの夢に決まってる!もう一度寝て起きればきっと現実が戻ってくるはずだ」
「え、あ!り、稟くん!?寝ないでください!!稟く~~~ん!!!」
布団に潜り込み現実逃避する俺に、楓は必死に止めに入ってきた。
だって、こんなのあり得ないじゃないか。
俺が……俺が………女になってるなんて!!!!!

「ははは、いやはや凄い事になってるね、神ちゃん」
「わははは、全くだなまー坊」
「笑い事じゃないですよ…」
芙蓉家の居間にお気楽に笑う二世界の王の声が響いた。
現実逃避をして不貞寝を始め現実逃避をする俺を必死に説得をした楓のかいあって数分後ようやく現実と向き合う決意をし両隣の王に不本意ながらも助け船を求めたのだった。
そして話を聞きつけたシアやネリネも変わり果てた俺の姿を心配そうな目で見つめながら、おじさん達と一緒にここに集まっていた。
「ごめんね、稟ちゃん。でも本当にこれは珍しい事なんだよ」
「そうだぜ、稟殿。神、魔界始まってこんな現象見たことはないからな」
「え?本当ですか!?」
じゃ、まさか俺はずっとこのままか?
「稟くん……」
明らかに落胆する俺に楓は心配そうに俺の手を握る。
さっきから、黙って俺の隣で会話を聞き入っていたプリムラや、シア、ネリネの顔も不安に表情を曇らす。
しかし、俺達の不安を打ち消す様に軽快な笑い声で神王のオジサンが言った。
「わはははは。いや、早とちりしちゃいけねーな、稟殿」
「そうだよ、実例がないからと言っても治らない事じゃないよ」
「そうだぜ。ま、とりあえず命に別状はないから当分はそのままで我慢してくれ」
その言葉に安心した俺達は安堵をし肩の力を抜いた。
「でも、なんでこんな事が起きたんですか」
「ああ、それは簡単に説明するとね。今の稟ちゃんの体には特殊な魔法の力が宿っているみたいなんだ」
「魔法の・・・力?だけど俺はただの人間ですよ」
「そうですよお父様。稟様は今まで一度だって魔法は……」
「うん、使えないはずだね」
「だったらなんで俺の中に魔法の力何かが…」
その言葉に二人は真剣な表情に変わり言葉を続けた。
「これは僕の予測だけど原因は、楓ちゃんを助けるために中に入ったせいだろうね」
「え…私の……」
自分のせいと言う言葉に楓の表情が変わった。
俺は責任を感じる必要がない事を伝える為に楓の震える手を握り優しく微笑む。
「皆から聞いた楓ちゃんの精神世界は現実世界と異なり、魔法の力が影響し本人が隠していた不安や恐れで作られた世界だった。その世界の奥深くまで進み触れた稟ちゃんだからこそ楓ちゃんの願いの一つに影響したんじゃないかな。稟ちゃんが女でいて欲しいって…楓ちゃんはその事に対してどう思うかい?」
聞かれた楓は魔王のおじさんから視線を逸らし淡々と語った。
「それは……まだずっと昔にほんの少しだけ思った事はあります。稟くんと結ばれないなら、一緒女の子同士ならずっと一緒に居られるんじゃないかって…・…他の誰かに取られる事がないって……でもほんの少しですよ?リンさん達と会う前でしたし、私も今まで忘れてましたから」
「うん、だけど、記憶の世界ではその思いが少なからず残っていて稟くんが触れた事で影響したんだと思うよ」
強すぎる思いがこのような結果を起こしてしまったって事か…魔法と言うのは凄いものだな。
「それにな、今の稟殿の中にある魔法は俺達が使ってる魔法とは根本的に性質が違うのも興味がある点でもあるな」
「性質って……何?お父さん。」
「シアも魔法を使えるなら分かるだろう。俺達の使ってる魔法は体内にある魔力を、自らの精神力で放出し具現化させる。」
そう言いながら、神王おじさんが掌に魔力を込めるとその拳が力強く青い光を放っていた。
「俺達の魔法は根本的にはどれも一緒だ。再生と破壊のどちらかを選ぶ。もちろんそれに該当しないものもあるが……だが、魔法って言うのは結局この世に存在してないものは、作り出す事は容易じゃねー」
「うん。だけど、稟ちゃんにかけられてる魔法は僕らの魔法とは明らかに覆してる魔法だ。一から存在を生み出す力だと言っても良い」
「それって……お父様」
「お父さん、その話は本当なの……」
「ああ…マジな話だ」
なんだ…この雰囲気。
なんか滅茶苦茶重いって言うか押してはいけないボタンを押したみたいな雰囲気は……
「あ、あの。魔王様、神王様?言ってる事がいまいち分らないんですけど……」
楓の言葉に俺も、混乱している頭をなんとか整理しながらも相槌だけする。
俺よりも数倍秀才である楓が分らないのだ、俺なんか一mmも理解できるはずがない。
「ごめんね。私たちだけで納得してるみたいで」
「あ、いや。そんな事はないです」
苦笑を浮かべ謝る魔王のおじさんに、俺からも説明を求めた。
「んーそうだね……簡単に言うと、プリムラの目指す魔法のそのものって言った方が良いかな」
「プリムラの魔法?・・・癒やしの魔法より……ですか?」
「そうだね。稟ちゃんの中にある今の魔法はね、それほど稀な魔法……いや、奇跡と言った方が良いのかな。それぐらい特殊なものなんだ」
「稟殿の生態組式まで完璧に女性に変換してるからな。これは一種の誕生だと言っても良い。プリムラに俺達が求める魔法の一つ……だが、プリムラの魔法だけと楓穣ちゃんの気持ちだけでこの現象が起きるなんて思いもよらなかったがな」
「は、はぁ・・・」
何とも情けない言葉を発していた。
難しくてよく分らんもんはしょうがない。
ま、簡潔に言うとつまりは楓に流れたプリムラの魔法が未だに影響してるって事か。今度は俺に。
しかも直ぐには直せないと。
「取りあえずは、これ以上の事は分からない。こっちでも色々と調べてみっから暫く辛抱してくれ…な?」
「そうだね、私の方も出来る限りの事はするよ」
「そうですか・・・・分りました。お願いします」
「おう、まかしてくれや!」
「ああ、任せてくれたまえ!」
豪快に、返事する二人。ええ、普段は駄目親っぷりな二人だけど、いざって時は頼りになるのは分ってますから信頼してはいる。
しかし……やっと、ある程度現状が納得出来たお陰で少しは気持ちは落ち着いてきた。
だけど、楓の方を見るとやはりその顔は沈んでいた。また自分が原因で俺がこうなってしまったのを責めているのだろう。
プリムラも何時もの無表情から何所か泣きそうな顔で見つめ俺の服を握る手が震えていた。
そんな二人に、心配掛けまいと俺は何時ものように笑った。
「そんな顔すんなってプリムラ。別に命に別状はないんだし、気にするな。楓もな」
プリムラと楓の頭を優しく撫でる。
「稟くん……」
「稟……」

「とりあえず、俺はどうすれば良いんです。」
オジサン達に今後俺はどうするか聞いてみる。
一応体自体は問題はないし、女の体だから若干の違和感はあるがそれ以外は良好だ。
「うん、そうだね……とりあえずはそのまま何時も通りの生活をしてくれればいいよ」
「体自体に、影響はないはずだからな。私生活ぐらいなら問題はない筈だぜ」
「そうですか・・・それなら、今日は学校へ行ってきます」
「そうかい。別にそんな状態なら学校は休んでも良いとは思うんだけどね」
「いや、それをすると……担任が怖そうなんで止めておきます」
いくらなんでも当分治る見込みがないのに、これぐらいで何時までも休んでたら復帰した時の紅女史の補習と言う名の教育が怖そうだし出来るなら勘弁したい。
苦笑を浮かべてしまう俺に、周りの皆は心中を察しており同じ表情になっていた。
「そうかい」
「お気づかいありがとうございます。でも、体が女になってるだけで他は問題ありませんから大丈夫ですよ」
「稟ちゃんが構わないなら良いけどね。それはそうと学校へはその恰好で行くのかい?」
「何か変ですか?」
俺は何時もの自分の制服を着ているのだが……
「せっかく女性の体になっているんだし、女生徒用の制服を着てみてはどうだい?きっと稟ちゃんなら似合うよ」
とんでもない事を提案する魔王のおじさんの手には、どこから出したのか女生徒用のバーベナの制服が握られていた。

「ぶっ!?」

思わず吹いた。
笑っている魔王のおじさんを見ていると、どうやら本気で言ってるようだが…マジですか?
だけど、俺のその制服姿を想像した女性陣は呑気に嬉しそうにはしゃいでいた。
「言われてみれば今の稟くんかなり美人だもんね……あれで、あの制服着たら…きゃ~~~♪」
「な、なんだか恥ずかしいです。でも…稟様と同じ制服で学校行けるなんて私は夢のようです」
「稟くんの女装……稟くんの………ぽっ」
「…いいかもしれない」

「ちょっ!?待て待て待て!!!お前ら勝手に想像するな!!!」

女性陣から聞こえた会話に思わず寒気を感じる。
さっきまで落ち込んでいたのに楓とプリムラも復活早いな。
い、いくら体が女になったからと言って女物の服なんて嫌だぞ、俺は!!
「わ、悪いけど、お断りします!!」
「そうかい……残念だね」
本当に残念そうに顔を曇らせる魔王のおじさんに軽く殺意が浮かびます。
後ろから、女性陣の寂しそうな視線を感じるが俺の名誉の為に、あえて無視をした。
体がこうなってしまったもんは仕方がないから諦めるが、女物の服を着るのは男として絶対嫌だ。
「そ、それじゃ行ってきます!神王と魔王のおじさん、さようなら!!」
これ以上何か言われる前に去るのが得策と判断し、俺は強引に部屋を出て行く。
「あ、稟くん!?」
「まってよ、稟くん。私も行くっす!!」
「稟様待ってください!!」
「私も行く」
出ていく俺に慌てて楓やシア、ネリネ、プリムラも後を追うように部屋を出ていく。
「あ、稟ちゃん!!……あーあ行っちゃったね。残念だよ。せっかく用意したのに……」
俺に制服を着せられなかったのがそんなに残念なのか、深くため息を吐く。
そんな魔王のおじさんに、神王のおじさんは何所か真剣な表情で話しかける。
「…なぁーまー坊。」
「なんだい神ちゃん。」
「…稟殿に本当の事話さなくて本当に良かったのか?」
「ん。それは……どうだろうね。あれだけ体に影響を与えてる大魔法だし、無理に取り外せば稟ちゃんに危険が及ぶかもしれないからね。何も分かっていない今はあえて伝えないのが得策だよ神ちゃん」
魔王のおじさんのその言葉は神王のおじさんも予想してたのか、申し訳なさそうに顔を顰めた。
「全く。稟殿には…何時も迷惑ばかりかけてるな俺達はよ…」
「そうだね……彼には、本当に感謝はしているよ。でも、今の状態でも皆楽しそうだったし良いじゃないんかな」
「はは、ちげーねーや!」

家の中でそんな会話をしてたなんて全く知らない俺は、何時もより遅く学校の道を歩いていた。
その足取りは重い。
「はぁー・・・・クラスの連中絶対笑うだろうな・・・・」
そう思うと益々気が重くなってくる。
落ち込む俺に、シアが元気に励ましてくれた。
「大丈夫だよ。稟くん、今の稟くん全然可笑しくないから」
「いや、でも男だった俺がいきなりこんな恰好になってると、流石に引くだろう」
「いいえ!全然引きません!!私だったら今の稟くんでも、十分愛せます!!」
「か、楓?」
「それに、もし稟様を笑う不届き者が居たなら、私が黙られますから安心してください」
「私も協力する」
冷徹に頬笑みながら話すネリネの手には、魔法の塊が出来、それに便乗するようにプリムラの手にも同じぐらいの魔法の塊が出来ていた。
「いや、それは勘弁して下さい」
俺はなんとかネリネとプリムラを説得して、決してそれだけはしないようにと釘を刺しておいた。
渋々承諾するネリネとプリムラだが、そうしないと本気で死人が出るからな。冗談抜きで。
取りあえず、この恰好が笑われない事だけを祈ろう。

そうして俺達はずいぶん時間が過ぎてから学校へと到着し自分の教室へと向かった。
既に教室は、2時限目の授業の真っ最中らしく静かにチョークの音と紅女史の声が響いていた。
「やっと、来たか。事情は聞いてるから席に着け……それとつっちー」
「はい。なんですか?」
「ま、なんだ色々聞きたい事はあるが……何かあれば遠慮なく芙蓉達を頼れよ。私も出来る限り協力するが、何時も居られるわけじゃないからな」
紅女史の心使いに俺は感謝をする。
「…分りました。ありがとう御座います。」
だけど、席に戻る間。特に俺に、教室中の生徒の視線を浴びていた。
教室中からヒソヒソと声が聞こえる。授業中の黙さんとしている今ではその声もよく聞こえた。
「こら!お前ら、授業中だぞ私語を慎め!」
紅女史の叱咤が響くがそれでも、所々で、声が途切れはしなかった。
どうせ……俺の恰好は変だろうさ。
俺は二時限目の授業が終わるまで、視線を体中に浴びながら残りの時間を過ごしたのだった。

「ははは、いやー稟が女になって登校してくるなんて世の中何が起こるか分かったもんじゃないね」
「五月蠅い。俺だって好きで女になったわけじゃない……それと、この恰好あまり笑わない方が身の為だぞ。」
視線の集中を受けて異常に疲労した俺は授業が終わるなり、いの一番にやって来た樹の悪態にうんざりとした態度で返す。
そんな俺の態度を微塵も気にしてない樹は何時もの余裕の笑みを浮かべていた。
「死にたいなら止めはしないが」
ネリネの方に指を指すと怒った表情をしてこっちを(樹を)睨んでいた。
「いやー、ネリネちゃんみたいな極上の美少女に召されるなら俺様としては本望だよ!」
親指を立てて嬉しそうにそう宣言する樹に俺は呆れて言葉が出なかった。
「緑葉くん、何危ない事言ってるのかしら?いっぺん脳の検査行った方が良いんじゃないの?」
麻弓に続いて楓達もこちらに寄ってくる。
「土見くんも苦労するわね。魔界や、神界の王候補になったり記憶世界に入ったり女になったり」
「麻弓……」
ポンポンと俺の肩を優しく叩く麻弓に俺は少しだけ感動していた。
何時もなら、樹と一緒に煽りそうなものなのに……麻弓って本当はいい奴だったんだな。
と心の中で感心していたのもつかの間。
「で、ものは相談なんだけど一枚衝撃的なこの事実を写真に収めたいんだけど一枚いいかしら~」
前言撤回。こいつも、駄目だ。
麻弓の言葉にしかめっ面をする俺を見て楓達も苦笑を浮かべていた。
愛用のデジカメを持って、小悪魔な微笑みを浮かべる麻弓に溜息しか出てこない。
なんで俺はこんな奴らの友人何かやってるんだろうな………
「はぁー・・・」
ため息を漏らしけだるそうに窓からそっと外を眺めた。
あー外はこんなにも青いのにな………

「うわぁ…稟くん。綺麗っす……」
「はい…稟様素敵です………」
「稟くん………」
「へぇー…」
「……ふむ」

すると俺を見つめる楓達3人が頬を染めながら感嘆の声を上げていた。
樹や麻弓までも、どこか驚いている感じだった。
……何故だ?
「ん?どうしたんだよ、みんな?」
「あ、いえなんでもないっす。ね、リンちゃん。」
「は、はい。ちょっと……稟さまに見惚れてただけです。楓さんそうですよね」
「え!は、はいそう……ですね。黄昏る稟くんがとっても素敵だったので…」
「?変な事言うんだな……ま、いいや。ちょっとトイレ行ってくる」
席を立ち長くなった髪を揺らしながら、俺を見つめる3人の熱っぽい視線を感じながら教室を出て行く。

稟がいなくなった事で、本人に気兼ねしなくなったのか3人はワイワイと先ほどの出来事を話し始めた。
「ね、ね。さっき外を眺める稟くんとっても素敵だったよね~。まだ胸がドキドキしてるもん☆」
「そうですね。何時も稟様は格好良んですけど、これはこれで・・・・私も、思わず魅入ってしまいました」
「私もです。稟くんとても綺麗でした……」
女三人の会話は徐々に火が付き段々ヒートアップしていく。
「きゃ~~~、そうだよねそうだよね♪こんな事言うと稟くん怒るかもしれないけど、女の子の稟くんも良いよね」
「はい。楓さんはどうですか?」
「それは……ちょっとだけ」
頬を赤く染めながらも、あっさり肯定する楓。
そんな3人を見つめながら、楽しそうに見つめる樹と麻弓だった。
「あらま。てっきり困ってると思ってたけど、以外に土見ラバーズは満更でもないようね」
「そうみたいだね…ま、その気持ちは分らないでもないかな」
「緑葉くん、それどういう意味なの?」
「俺様の目から見ても今の稟は相当極上だということだよ」
「あー…確かに。ってまさか緑葉君も……」
麻弓も先ほどの稟の仕草を思い出し、納得する。
女性である、麻弓から見ても今の稟は土見ラバーズの面々に引けをとらない容姿を感じていた。
「はは、僕を誰だと思ってるんだい。あれだけの美人なら、黙って見てる方が可笑しいっと言うものだろう麻弓」
「あー、さいですか……」
「それに他の生徒もそう思ってるみたいだけどね。周りの話声を聞き入ってみれば分かるよ」
そう言われて麻弓は周りの喧騒に耳を傾けると、そこかしこに男女関係なく土見稟の話題が沸騰しているのが聞こえた。
『何かあれやばくねー・・・』とか『土見くんって綺麗だったね。』とか終いには『俺・・・なんかいけない世界目覚めそう』とか『お姉さまって読んでも良いかしら?』とか相当危険なワードまで聞こえていた。

「あ、あははは。確かに、クラスの連中も、満更でもないようね」
「ふふっ、クラスの連中だけで終われば良いだろうけどね」
「え?それってどういう意味?」
「言葉通りの意味さ」
にやりと含みのある笑みを浮かべる樹に麻弓は、首を傾げるが長年の付き合いから只ならぬ騒動が起きるのは予想は出来ていた。
「まさか……」
ぽつりと呟く麻弓の言葉に、樹はメガネをクイッと指で持ち上げて不敵に笑うだけだった。
「あーあ。女になっても大変な眼に合うなんて、土見くんはそういう運命の星の人なのかしらね……あ、そう言えば土見くん、トイレに行くって言ってたけどどっちのトイレに行くつもりかしら?」
何の気なしに呟く麻弓の言葉を聞いていた、楓達はハッと何かを気付き急いで教室を出て行った。


ちなみに、麻弓の予想は正しく稟はどっちのトイレに入ればいいか右往左往している所を楓達に見つかり、周りの奇異の目を浴びながらも稟は楓達に連れられなんとか洩れる前に事なきを得た。
どっちのトイレに入ったかは……想像にお任せする。
とりあえず不本意ながらではあるが、この体の中は女生徒用の制服で来るのが吉だと痛感した。
はぁー…早く元の体に戻りたいな。


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