お昼御飯を食べて部屋でゆったりとマンガを読んでいると家のチャイムが鳴った。

ぴんぽーん

「ん、誰だ?」

ぴんぽーん、ぴんぽーん、ぴんぽーん

まるで俺に早く出てくれと言わんばかりに鳴り続けているチャイム。
俺は、煩さに多少顔を顰めながらも玄関に向かった。
「はいはい、そんなに押さなくても今出ますって。誰ですか・・・・・」

「る~☆貴明、遊びに来たで~~~♪」

「うわぁ!?」

扉を開けるなり元気な声とともに飛び出してくる小さな物体に抱きしめられた瞬間、体に感じるこの柔らかい感触は。
このパワフルな表現と独特の喋り方は俺の知る限り彼女しかいない。
「さ、珊瑚ちゃん?」
「相変わらず情けない顔しとるな、貴明」
「瑠璃ちゃんまで、どうしたのさ」
俺の質問に瑠璃ちゃんは不機嫌そうに眉を吊り上げた。
「別に・・・・ウチはさんちゃんについてきてただけや」
素気ない態度をする瑠璃ちゃんを珊瑚ちゃんは俺に抱きついたまま見つめて困ったように呟いた。
「瑠璃ちゃんはほんま、素直やないな・・・・あんな、いっちゃんがなクッキーを焼いたんや。それで貴明も食べへんかと思うって来たねん」
「クッキー?」
そう言って珊瑚ちゃんは瑠璃ちゃんの手にある少し大きめなバスケットを指さした。
そう言われれば確かにほのかに甘い香りがするような気がする。
「美味しそうだね・・・・・でも、わざわざ珊瑚ちゃん達が来なくても電話してくれれば俺が行ったのに」
「それはそうなんやけどな。たまには貴明の家にも行ってみたかったんや。まだ一回しか行った事しかあらへんかったしな」
「そう・・・ま、珊瑚ちゃんが良いなら別に良いけどさ」
なるほどそんな訳か・・・・突拍子もないのが珊瑚ちゃんらしいけどさ。
話が一段落してほっと一息をつくと、俺の耳に不機嫌な声が聞こえてきた。

「・・・それで、何時までウチらはここに立ってればええんや?」
「え、あ!ごめん」
「嫌ならウチら帰るで」
「そんな事は無いって。と、取りあえず上がってよ」
「はぁー・・・まぁーええわ。貴明、台所借りるでお茶淹れへんとあかんからな」
「あ、うん。・・・・あ!!俺が荷物持つよ!」
「ええ、別にそんな重ないし」
俺の申し出はあっさりと断られムスッとした表情で瑠璃ちゃんはスタスタと早足に家に上がって行った。
その後ろ姿を見送りながら、俺は溜息を吐く。
「はぁー・・・しまったな。また、怒らせちゃったかな」
困ったように頭を掻く俺の呟きを聞こえた珊瑚ちゃんは何時もの口調で答えてくれた。
「そんな事ないで、貴明。あれは瑠璃ちゃんの照れ隠しやから」
「そうなの?俺にはそうは見えないけどさ」
いまいち自信が持てない俺に珊瑚ちゃんはにっこりとほほ笑む。
「大丈夫や。瑠璃ちゃんは意地っ張りやからな、素直になれへんだけやねん。瑠璃ちゃんも貴明の家に行くの誘った時は嬉しそうにしとったよ」
「本当に?」
あの瑠璃ちゃんが?あんまり想像出来ないな。
訝しげな顔をする俺に珊瑚ちゃんは満面の笑みで断言する。
「ほんまやって、瑠璃ちゃんの事ならウチ何でも分るねん。せやから、ちゃんと瑠璃ちゃんが貴明の事好いてるのも知ってるよ」
何時ものほんわかとした雰囲気で話す珊瑚ちゃんに俺は自然と頷いた。
何だろうな・・・珊瑚ちゃんの笑顔を見てると不思議とそう思えてしまうのが謎だ。
「うん、珊瑚ちゃんがそう言うならきっとそうなんだろうね」
「そうやで♪あ、もちろんウチも貴明の事はスキスキスキーやからな~」
見事に最後は珊瑚ちゃんらしい締めくくりに俺は笑みが浮かぶ。
「ありがとう珊瑚ちゃん、俺も好きだよ」
「えへへ♪」
普段ぽわぽわしてる風に見えて、しっかりと皆を見てるし・・・・・本当珊瑚ちゃんは不思議な子だよ。
俺に勿体ないぐらいの良い子だよな。うん。
でも、瑠璃ちゃんに対しては何時も突っ張った態度しかしてないしどうにも自信が持てない。
俺も珊瑚ちゃんみたいにもう少し瑠璃ちゃんの事を知るべきなんだろうな。
しかし・・・・それもりもだ。今はこれをどうにかしたい。
「でもさ・・・・珊瑚ちゃん」
「ん、どないしたん?」
「その・・・・何時まで俺に抱きついてるの?」
「え?駄目なん」
「駄目って事は無いけどさ・・・その・・・ちょっと恥ずかしいしさ」
珊瑚ちゃん達と仲良くなってからはある程度は女性に免疫がついた俺だけど未だ緊張するのは事実。
これだけ長い時間抱きつかれれば嫌でも俺の体は反応する。
しかし、珊瑚ちゃんはキョトンとしていて意味が分らないように首を傾げた。
「何でや?抱きつくぐらいええやん。うちらもっと凄い事してるんやでー」
そう言ってもっと力強く抱きついてきた。
いや、確かにそうなんですけど慣れないものは直ぐに慣れないと言うかね・・・・あ、ダメだこんな理由じゃ珊瑚ちゃんは納得しない。
小さいながらもこの微妙に感じる柔らかい二つの感触・・・・・・うっ、これ以上続いたら結構俺ヤバいかも。
俺は仕方がないので他の譲歩案を出した。
「い、いや。瑠璃ちゃんの手伝いもしないといけないしさ。お客さんなのに瑠璃ちゃんだけに任せておくわけにもいかないだろ?」
「うーん・・・・そうやな。分った、残念やけど、離れるわ・・・・・」
その言葉は流石に聞いてくれたのか、珊瑚ちゃんは凄ーーーーく残念そうにしながらもやっと俺から離れてくれた。
ほっ・・・助かった。でも、これだけ落ち込まれると少しだけ罪悪感が湧くな・・・・・抱きつかれるのが嫌な訳じゃないし。
俺は困ったように頭を掻きながら、珊瑚ちゃんを励ます様に頭を優しく撫でてあげた。
「ごめんね。その・・・・今度、またしてあげるからさ」
その言葉に少し期待を乗せた視線を向けながら聞いてくる。
「ほんまか・・・?」
「あ、ああ。約束するよ」
頷く俺に、珊瑚ちゃんの顔は笑顔に変わる。
「うん・・・分った。ウチ、楽しみに待ってるな♪」
俺の言葉に珊瑚ちゃんは、ぱっと花が咲いたような笑顔になり嬉しそうに俺の部屋へと駆けて行った。
「約束やで貴明♪忘れたら承知せんからな~~」
「分ってるよ」


そして俺は部屋には戻らずキッチンで準備をしている瑠璃ちゃんの元へ足を運んだ。
袋から出したのか、クッキーの良い匂いが鼻腔に香る。
「ごめんね、瑠璃ちゃん。一人で準備させて」
「・・・別にええよ。茶もないとお菓子も味気ないやろ」
「確かにね・・・ってあれ?この匂いってもしかして、紅茶?家に紅茶の葉なんてあったっけ」
「ウチから持って来たんや」
瑠璃ちゃんが指を指す方には先程の持っていたバスケットが開いていた。
その中から紅茶のポットや葉、カップまで見えていた。
「貴明の家には無いのは分ってたし、ウチらはお菓子食う時は何時も紅茶を飲んでんねん」
「そっか。瑠璃ちゃん、用意が良いね。きっと将来良いお嫁さんになれるよ」
俺のさり気無い言葉に瑠璃ちゃんはビクッと震えてポットを落としそうになる。
「っ!?危なぁ・・・・・・こ、こんなん誰でも出来るわ。適当な事言いなや!」
「そうでもないよ、俺じゃそこまで出来ないし」
「ふん・・・ズボラな貴明に褒められても嬉しないわ」
悪態を吐きながらも準備を進める瑠璃ちゃんだけど、顔は褒められて少し嬉しそうに見えていた。
やっぱり、珊瑚ちゃんの言うとおりだったかな。
しかし紅茶っか・・・・俺は普段珈琲しか飲まないからな、あんまり飲んだ事ないよな。
結構紅茶っていい匂いするんだな。知らなかったよ。
「それでどうするん?」
「何が?」
「貴明も紅茶でええんか。何なら珈琲も入れるで?」
インスタントの珈琲が入ったボトルを持ちながら俺に聞いてくる瑠璃ちゃんに俺は少し悩んだ。
「そうだな・・・・いや、折角だし俺も紅茶にしてみようかな。皆で同じ物の方が楽しそうだし」
「そうか、そっちの方がウチも手間が無くてええわ」
そして準備が出来た俺達は、お盆に食器やポットを乗せて後は部屋に持って行くだけになった。
「それじゃ行くで貴明」
「あ、待って俺が持つよ」
お盆を持とうとする瑠璃ちゃんより先に俺は掴んだ。
出遅れた瑠璃ちゃんの手は空を切り少しだけ呆気にとられた顔をする瑠璃ちゃんに俺は笑顔で答えた。
「重いでしょう。今日のお菓子に対してのお礼ぐらいさせてくれないかな」
「ふ、ふん!そんな、お菓子はイルファが作ったやんか。ウチには関係あらへんやん」
「それもそうか。なら、お茶のお礼って事で」
「お、お礼ってまだ飲んでもないやん!美味しいか分らへんで」
「いや、絶対美味しいから大丈夫だよ。瑠璃ちゃんお手製だからね」
お盆を持ってない手で親指を立てて断言してあげると瑠璃ちゃんは、火が着いた様に急に顔が真っ赤になって顔を伏せながらドシドシと床を荒く踏みつけながら俺を通り過ぎた。そして振り向く事なくぶっきら棒に言う。
「か、勝手にしい!落としたら承知せーへんからな!!」
「了~解」
怒ってるように見える瑠璃ちゃんの態度。だけど俺は通り過ぎて先に部屋を出て行く瑠璃ちゃんが小さく「ありがとう・・」と呟いたように聞こえたのはきっと俺の気のせいじゃない・・・と思いたかった。






「お待たせ珊瑚ちゃん」
「珊ちゃん用意出来たで~」
俺の部屋に入ると珊瑚ちゃんは俺のベットに座り何かを読んでいた。
漫画でも読んでるのかな?・・・ここからじゃよく見えない。
「珊ちゃん何読んでるん?」
「あ、瑠璃ちゃんも見てみるかー」
「う、うん」
珊瑚ちゃんは近寄って来た瑠璃ちゃんに一冊本を渡した。
俺は取りあえず、持っているお盆を部屋に備え付けてあるテーブルの上に置いたと同時に瑠璃ちゃんの叫び声が聞こえた。
「ひやぁ!?さ、珊ちゃん!!何やのこれ!!!」
「何って貴明の趣味やろ。あーあ貴明は巨乳が好きやったんか・・・・・ウチのこんなぺったんこな胸は好きやないんかな・・・・・」
へ、俺の?
俺はその会話に不思議に思い二人の方に目を向けると、さっきは見えなかった本が瑠璃ちゃんの手に握られていた。
そのタイトルは・・・『『巨乳のメイドさん100連発!!』と書かれていた。
もちろん俺はそんな趣味は無いし、買った覚えはない。
珊瑚ちゃん達出会う前に『お前も女に少しは興味を持てーーーーーー!!』とか言って強引に置いて行った雄二のお宝本・・・らしい。
ちなみに、中身は置いて行った当時少し見たが結構際どい写真が多く俺は直ぐに閉じた。
俺は今まですっかり忘れていたそれが見つけられたのがとてつもなく恥ずかしくなった。

「こ、こんなの見ちゃ駄目!!」

俺は慌てて瑠璃ちゃんの手から本を分捕り机の中に急いでしまった。
珊瑚ちゃんは何か言いたげな眼を向けていて瑠璃ちゃんは恥ずかしそうに俺を見つめていた。
俺の本じゃないのに・・・・・この視線が凄く痛いです。
「あの・・・・その・・・・・これは俺の本じゃなくて、雄二が勝手に置いて行ったものでその・・・・・と、とりあえず!!お茶の準備が出来たんだから、食べようよ!ね」
「そ、そうやね」
今の俺にとって出来る事は必死に場を誤魔化す事しか出来なかった。
瑠璃ちゃんも俺と同じ考えなのか無かった事にしてくれたようだ。
ただ、珊瑚ちゃんだけはずっと物欲しそうに俺を見ていた。
うう、何でこんな事に・・・・雄二恨むぞ。

そして、俺達は妙な雰囲気のままで3人だけのお茶会を始めた。
最初の頃はあの本のせいで微妙にギクシャクしてたが、暫くしてどうにか何時もの雰囲気に戻っていた。
「お、結構美味しいよこれ」
クッキーを一摘みして口に運ぶと素直に言葉が出てくる。
中もサクサクで甘味も程良いのが俺としてはちょうど良い。
最初の時はあの本のせいで味を楽しむ余裕なんて無かったからな。
「流石いっちゃんや☆でもウチはもう少し甘い方が好きやで」
「確かにさんちゃんにはちょっと甘さ足らなそうやな・・・でもウチは結構好きやで、この味」
「へぇー・・・」
少し感嘆の声を上げる俺に瑠璃ちゃんは訝しげな顔で見てきた。
「なんや貴明その顔」
「いや、他意はないよ。だた、イルファさんに直接言ってあげたらきっと喜ぶって思ってさ」
俺がそう勧めると瑠璃ちゃんは、ビクッと体を震わせそしてそっぽを向いた。
「・・・い、嫌や。そないな事言うたらイルファ調子に乗って何されるか・・・・」
「良いじゃん別に抱きつかれるぐらい」

「あんなん抱きつくなんてレベルやあらへんわ!!!」

顔を真っ赤にしながら、叫ぶ瑠璃ちゃんに俺と珊瑚ちゃんは口を揃って言った。
「「瑠璃ちゃんって・・・・」」
「照れ屋(だねー)やなー」
「ウチは照れて何かあらへん!!」
あくまで認めない瑠璃ちゃんの強情さに俺は可笑しくて笑ってしまった。
「な、何や!なんで笑うん!!」
「いや、瑠璃ちゃんは本当可愛いなって思ってね」
「か、かわっ!?」
俺の率直な言葉に顔を真っ赤にする瑠璃ちゃん。
ほら、やっぱり可愛い。
と、俺がそう心の中で思ってると珊瑚ちゃんが隣に寄ってきてクイクイと袖を引っ張ってきた。
「なぁなぁ貴明?」
「何、珊瑚ちゃん」
「ウチも可愛いん?」
期待した目を向けて俺を見ていた。
そんな珊瑚ちゃんに俺は優しく頭を撫でてあげた。
「もちろんだよ」


そんなこんなで俺達3人はお茶会を楽しく笑って時には瑠璃ちゃんの怒鳴り声を響かせながらも満喫していた。
ひとしきり時間が経つと、クッキーもなくなり紅茶の残りも無くなり話す話題も落ち着いていた。
窓から日差しが入ってきて妙に心地いい。
こんな時は素直に昼寝をしたい気分だな。
思わずそう思って珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんの方に目を向けると二人とも俺と同じ気分なのか少しうとうとしていた。
「二人とも眠そうだね」
「ん?そうやな・・・なんや日差しが気持ちよーってな」
「ウチもや・・・」
「なんだったらさ、俺のベットで寝ても良いよ。男用だから二人で寝ても十分広いしさ」
「・・・うん。そうするな」
俺の言葉に珊瑚ちゃんはコクッと頷きトコトコと歩いて行きそのままベットへゴロンと寝転がった。
そして、あっという間に可愛い寝息が聞こえてきた。
「瑠璃ちゃんも、良いよ。眠たいんでしょう?」
「・・・貴明はどうするん?」
「俺?俺は・・・・二人の可愛い寝顔でも見てる事にしようかな」
何て笑いながら言うと、瑠璃ちゃんは俺の袖を掴み上目使いで見つめてきた。
「嘘つきぃ・・・・貴明も眠そうにしてるやん」
「え・・・・そんな事は無いよ?」
「ほんまか?」
じーっと真剣に見つめる瑠璃ちゃんに俺は誤魔化す事が出来なかった。
「えっと・・・俺もちょっと眠いかな」
「やっぱりやん・・・・・」
「瑠璃ちゃん?」
瑠璃ちゃんは数歩歩いて恥ずかしそうに頬を染めながら振り向いた。
「その・・・な。へ、変な事せーへんかったら、一緒に寝てもええよ」
「え・・・・」
そんな甘い言葉に今度は俺の方が恥ずかしさで顔が真っ赤になってしまう。
瑠璃ちゃんからこんな言葉が出るなんて・・・・・
「い、良いの?」
「た、貴明には色々迷惑かけてるからな。たまにはお返しせんと悪いやろ。それ以外は何もないで」
「うん・・・分ってるよ。ありがとう、嬉しいよ」
「ふん」
照れくさそうにそっぽを向く瑠璃ちゃんは珊瑚ちゃんを跨いで行き一番奥で横たわり俺はその隣、つまりは川の字ならぬ小の字の恰好で寝る事になっていた。
流石に三人で寝ると俺のベットじゃ結構狭く二人の体温と息使いが直に感じていた。
「さ、流石に三人だと狭いね」
「し、しゃーないやん。これぐらいは我慢しー」
「そ、そうだね」
しかし、こんな状況じゃとても俺は緊張して寝る事なんて出来きやしなかった。
瑠璃ちゃんも同じなのか、仰向けに寝る俺に背を向けたままこちらを振り返りもしない。
この状況かなり恥ずかしいよな・・・・・・
落ち着かずもぞもぞと動いていたら先程眠っていた筈の珊瑚ちゃんが目を覚ましてしまった。
「ん・・・・あれ貴明?貴明も眠たかったん?」
「へ?あ、珊瑚ちゃん。そうだね、瑠璃ちゃんがね良い言って痛ててててて!!」
訳を話す俺の腕が思いっきり摘まれて痛みが走った。
俺は少し涙目になりながら摘まれた腕の方を振り向くと瑠璃ちゃんが真っ赤な顔をしたままで目を吊り上げて睨んでいた。
(余計な事言うな!アホ明き!!)
(ご、ごめん)
「どないしたん貴明?」
口籠る俺に珊瑚ちゃんが不思議そうに見ていた。
「あ、その・・・俺も一緒に寝たいなーなんて・・・は、はは」
我ながら何とも苦しい言い訳だ。でも珊瑚ちゃんは俺の言葉を素直に受け取り嬉しそうに腕に抱きついてきた。
「何やそうやったんか♪それならそうと言ってくれればええのに。ウチは全然構わんで☆」
「あ、ああ。ありがとう」
「瑠璃ちゃんもそないに恥ずかしがってないでもっと貴明とくっ付けばええやん」
「さ、さんちゃん」
「貴明の体温かくて気持ちええよ。瑠璃ちゃんがせーへんならウチが独り占めしちゃうで」
「ううっ・・・・・・ウチもやる」
珊瑚ちゃんの言葉に恥ずかしそうに頷き、俺の方を向き直って控えめに服を握ってきた。
それを見た珊瑚ちゃんは嬉しそうに笑みを浮かべた。
「やっと瑠璃ちゃんも、貴明にラブラブする気になったんやな~☆」
「う、ウチは別にラブラブちゃう!!」
「ええやん。皆でラブラブしようや」
「せやから~~ちゃう~~~~~」

こんだけ騒いでたら寝れないような気がするけど・・・・でもま、こんな休日もたまには良いかもしれないな。
俺を真中に挟みながら楽しそうに笑って話す珊瑚ちゃんと恥ずかしそうに頬を染めて話す瑠璃ちゃんを見ながら俺はそう感じていた。
本当この二人と居ると大変だけど毎日が飽きない。







おまけ

「そう言えば、貴明聞きたい事あんねんけどな」
「何、珊瑚ちゃん?」
「さっきの本の事やけど、貴明は巨乳とぺったんこの胸どっちが好きやの?」
「ぶっ!?あ、あれは俺の本じゃないから!!!」
「じゃ、ぺったんこが好きなんか?」
「だからなんでそうなるの!?・・・・・って何、瑠璃ちゃん」
「じー・・・」
瑠璃ちゃんまで・・・・そんな眼で・・・・・はぁー・・・・
俺は俺の為に明日に雄二が置いていった秘蔵の本を纏めて返そうと本気で思ったのだった。








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