暑さも段々本格化してきたこの頃。
俺達は4人は放課後のバス停前まで来ていた。
泊まり込みで研究所へ行かなければいけない珊瑚ちゃん、イルファさんを見送る為だ。
俺と出会う前から、たまにこんな事はあったらしい。
決まってその日は重要な作業があるらしく部外者は、立入りが出来ないみたいだった。
だから、直接研究に関わってない瑠璃ちゃんはお留守番するしかないので俺に今晩一緒に居て欲しいと珊瑚ちゃんは頼んできた。
俺は断る理由も無く、二つ返事で了承したのだった。

時刻表をみると研究所行きまでのバスは、もう少し後だった。
俺達は、話ながら暫く待つ事にした。
「なぁなぁ、瑠璃ちゃん。今日は貴明が一緒やから、寂しないやろ?」
「べ、別にウチは一人でも平気や、貴明が居らんでも全然平気や」
珊瑚ちゃんの言葉に瑠璃ちゃん何時もの強気な口調で返した。
だけど、その言葉にイルファさんがにやりと微笑み横やりを挟む。
「あらあら、そうでしたか?何時も寂しそうーに貴明さんが座る席を見てる気がしたんですけど気のせいでしたか?てっきり私は、貴明さんがいなくて寂しいかと思ってたんですけど・・・・そうですか、私の気のせいなんですね。」
「な、ななななななな!!!」
イルファさんのカミングアウトに、瑠璃ちゃんは更に耳まで真っ赤になる。
口籠って挙動不審にもなっていた。
(瑠璃ちゃん。そうなんだ・・・・)
会話が丸聞こえな俺はつい嬉しくて微笑んでしまう。
するとそんな俺の反応を見た瑠璃ちゃんが睨んできた。
「貴明ニヤニヤすんな!!う、嘘やからな嘘!勘違いせんなや!!」
「わ、分ってるって。そんな睨まないでよ瑠璃ちゃん。」
「もう、何時まで経っても素直じゃないんですから瑠璃様は。前なんて洗濯前の貴明さんの服を・・・」

「い、イルファ!!!」

更に何かを暴露しようとするイルファさんに遂に切れてバス停の前で瑠璃ちゃんはイルファさんを追いかけまわす。
「待たんかい!!イルファ!」
「ほほ、捕まえてごらんなさい瑠璃様♪」
俺の・・何?その続きがとてつもなく気になるな。
そんな傍から見たら楽しそうに走り回る二人を見ながら珊瑚ちゃんが楽しそうに笑いながら話しかけてきた。
「ははっ、相変わらずやな二人共。」
一体こんなやり取りを何回やってるのやら分らない二人を眺めながら、俺達はバスが来るまでの間騒がしく雑談を交わした。
しばらくして道の先からバスが見えてきて、バス停の前に止まり俺達の雑談は終わりとなる。

「それじゃ、貴明。瑠璃ちゃんの事頼んだで~。」
「うん。解ってるよ。」
「瑠璃様。暫しのお別れですね。・・・私が居なくて寂しいからって、一人で慰めないでくださいね。帰ったら一杯してあげますから。」
「はぁはぁ・・・・そやいな事せーへんし、しなくてええ!!とっと行きーや!!!!」
さっきからずっとイルファを追いかけまわしていた瑠璃ちゃんはすっかり疲れ果てていた。それでも、ちゃんと反論するあたりは瑠璃ちゃんらしかった。
「もうつれないんですから瑠璃様は。でもそんな照れ屋な瑠璃様が大好きですよ♪」
そんな瑠璃ちゃんの言い方に慣れっこなイルファさんは、勝手に自己解釈し疲れた瑠璃ちゃんを捕まえ抱きしたり頬擦りまでしていた。
「ウチは照れてない!!それに、だーきーつーくーな!すりすりするーーな!!!!」
嬉しそうにしているイルファさんに抱きつかれて、離そうとするけど体力が消費した今の瑠璃ちゃんでは全く対抗が出来なかった。
だけど、少なくてもそんな二人が楽しそうに見える珊瑚ちゃんは羨ましそうに二人を見つめていた。
「ええなー、瑠璃ちゃん。・・・・・・・・なぁ貴明、うちにもなんかしてくれへん?」
「へ?」
俺の制服の裾を引っ張りながらせがむ珊瑚ちゃんのお願いに俺は呆然とする。
「な、何かって何?」
「そうやなー、今日一日もう貴明と会えへんからな・・・・・・行ってきますのちゅーとかしてくれるとウチは嬉しいよ。」

「ち、ちゅー!?」

思わず驚く。
本気でここでするのか。そりゃ、あまり人通りは多くないけど全く人が居ないわけじゃない訳で・・・・・・・
横道でちゅーなんて恥ずかしくて視線を泳がすが、珊瑚ちゃんは俺の裾を握りながら上目使いで潤んだ眼で見つめていた。
(う!?・・・・この眼は・・・・・・・)
渋る俺にまるで、『ウチの事嫌いなんか・・・・』と言ってるような眼だった。
これで、断ろうものなら100%彼女は泣くだろう。
しかも、珊瑚ちゃんは俺がその眼に弱いのを知ってか知らずかよく使う。
そのせいで俺が珊瑚ちゃんのお願いを聞く事は少なくない。
惚れたもん負けってやつかな・・・・・・・・はぁー
俺は心の中で、小さく溜息をつき結局恥ずかしさを我慢して、珊瑚ちゃんの頬にそっと手を添えて可愛い小さな唇にそっとキスをした。
珊瑚ちゃんの小さな唇の感触に、心臓がドキドキする。
「・・・・これでいい。珊瑚ちゃん。」
「・・・うん☆ほな、行ってくるな、貴明♪」
恥ずかしくて珊瑚ちゃんの顔をまともに見れない俺に、珊瑚ちゃんは頬を染めながら嬉しそうに微笑んで元気に腕を振ってバスの中に入っていった。
珊瑚ちゃんに続いて満足した様子のイルファさんも心身ともに疲れ切った瑠璃ちゃんを離しバスに乗り込む。そうして満足した様子の二人を乗せて、やっとバスは出発した。


ふう・・・・やっと行ったか。珊瑚ちゃんには困ったもんだな。でも、珊瑚ちゃんに頼まれると嫌と言えない自分も悪いよな。
俺は困ったように頭を掻いた。
珊瑚ちゃん特有のオーラと言うか、とにかくあの眼で見つめられると嫌と言えない。
なんだか断ると、自分がとてつもなくいけないような事をしたような感覚に陥るのだ。
これぞ、まさに珊瑚ちゃんワールド。
しかし、珊瑚ちゃんに甘すぎる自分が、どうしようもなく情けなく感じのも事実だ。
でもな・・・・・断ると絶対珊瑚ちゃん泣きそうな顔するからな。あんな顔されたら、普通断れん。
つい心の中で思想しているとふと、自分に向けられる異様な視線を感じてそっちの方に顔を向ける。
そこには不機嫌というか羨ましいというかそんな複雑な顔をした瑠璃ちゃんが俺を見つめていた。
「どうしたの?瑠璃ちゃん。」
「・・・別になんでもあらへんよ・・・・・さんちゃんとキスしてデレデレしてみっともないって思ってるだけや。」
プイっと、頬を膨らませてそっぽを向いてしまう。
もしかして・・・・
「瑠璃ちゃんもして欲しいの?」
俺の言葉に、ビクリと体を震わし一気に顔が真っ赤になる。
「そ、そそそそそそんな事あらへんもん!!別にさんちゃんなんか羨ましくあらへんもん!!貴明なんかとちゅーなんてしたないもん!!!」
俺の言葉に激しく反論する。
だけど、それだけ顔が赤くなってると虚勢にしか見えない。いわゆる図星のようだ。
まったく素直じゃない瑠璃ちゃんに、思わず苦笑する。
「ぷっ。」
「な、何やその反応!?」
「いや、相変わらず瑠璃ちゃんは素直じゃないなって思ってね。でも、そんな瑠璃ちゃんはとっても可愛いよ。」
「な、なんやて!?」
更に赤くなる瑠璃ちゃん。その照れ顔は本当に可愛かった。
俺は赤くなって固まっている瑠璃ちゃんの頭にポンっと手を乗せて優しく撫でる。
「俺達も、そろそろ家に帰ろっか。あまり遅くなると日が暮れちゃうよ。」
俺の顔を撫でる手の隙間からじーと覗きながら瑠璃ちゃんは、はぁーっと溜息を吐く。
「・・・・・・貴明はずるいで。平気で歯の浮くよなセリフ言うし、恥ずかしがって意地張ってるウチが馬鹿みたいやん・・・・・ウチだって本当は・・・・」
「ん?何か言った瑠璃ちゃん。」
「なんでもあらへん!帰るんやろはよう帰るで!!」
撫でられてる俺の手を、瑠璃ちゃんは自分で軽く払いのけて先に進む。
俺の手を振り払う時に見た瑠璃ちゃんの顔は少し名残惜しそうな顔をしていた。
「うん、そうだね。」
俺はそれを気付かない振りをして返事をする。それを合図にドシドシと強い足取りで先に進む瑠璃ちゃん。
俺もその後に続く。
全く素直になれば、もっと可愛いのにな・・・・
でも、瑠璃ちゃんは今まで珊瑚ちゃんだけを守るように頑張ってきたんだ。
まだ、人に甘える行為が慣れないんだろうな。
仕方がないとはいえ、俺には遠慮なく甘えてくれてもいいのになと思ってしまう。
三人と繋がったあの日から、瑠璃ちゃんの事はある程度は分ってるつもりだ。
だから何時もの虚勢は彼女の照れ隠しなのは分かるが、俺としては甘えてくれる方が嬉しい。
故にちょっとその事には落ち込んでしまうのだ。
もしかして、俺ってまだ瑠璃ちゃんに警戒されてるのかな?
そんな事を考えているとふと、瑠璃ちゃんが足を止めいた。後ろ姿からは何を考えているかわからないが、迷っているのは雰囲気で感じていた。
するとゆっくり振り返り、恥ずかしそうに俺の方にそっと右手を差し伸べてきた。
「・・・・瑠璃ちゃん?」
「手・・・・握って。」
「え?」
聞き取りずらくて、思わず聞き返すが瑠璃ちゃんが何かをお願いするかのような眼を向けて手を差し伸べていた。
「さんちゃんだけは、ずるいやん・・・・ウチだって本当は貴明と色々と・・・・」
「瑠璃ちゃん・・・・・」
それ以上は恥ずかしいのか、上手く言えないみたいだった。
だけど俺はそれだけで、十分理解をしていた。
手を繋ぎたい・・・か。
瑠璃ちゃんは、恥ずかしそうに伏せ目がちに俺を見つめている。
そんな可愛いお願いに俺はもちろん、断る事もなく素直にその小さな手を優しく触れる。
瑠璃ちゃんの柔らかくて温かい手の感触が俺の掌に一杯に伝わる。

「・・・・・行こっか。」
「・・・・・・うん。」
何時帰りなれた道のりを、二人で手を繋いで帰る。
何時もと違う状況に俺はドキドキしていた。
瑠璃ちゃんも恥ずかしそうに顔を赤くしてたけど、心なしかいつもより嬉しそうな顔をしている気がする。
俺だってもちろん嬉しい。
「・・・なんや貴明嬉しそうな顔をして。」
「だって瑠璃ちゃんからのお願いなんて珍しいからね。」
「なんや、嫌なら止めてもええんやよ。」
俺の言葉を、変な風に解釈した瑠璃ちゃんがちょっと不機嫌そうな顔になる。
俺の手から離そうとする瑠璃ちゃんの手を俺はさっきよりも強く握り返してそれをさせない。
「・・・貴明?」
「・・・嫌な訳ないよ。むしろ、嬉しいぐらいさ。絶対、この手は絶対離さない。」
「・・・ふん、勝手にしい。」
「うん、勝手にするよ。」
俺の言葉にそっぽを向く瑠璃ちゃんだけど、それは決して不機嫌になったからじゃないのは分かっていた。
だって俺の手を放さないように瑠璃ちゃんの方からギュッと握り返してくれたから。
俺は嬉しくなって、遂ニヤけてしまう。
やっぱりこの子に好かれていると思うと俺は嬉しい。
俺だって、珊瑚ちゃんはもちろんイルファさんそして、瑠璃ちゃんも大好きだから。


「それで、瑠璃ちゃん。今日の夕飯は何かな?」
「なんやもう飯の話か。」
「だって瑠璃ちゃんのご飯上手いからね。」
「そうやな・・・・たまには、和風もええかもな。秋刀魚とかええかもな。」
「お、それ良いね。塩焼きだと最高だよ。・・・・・でも、瑠璃ちゃん和風も出来るんだ。」
「当たり前やろ。しゃーないな今日は、貴明のリクエストに応えてあげるわ。」
「マジで、やった!」
「飯ぐらいで、大げさな奴やなー。」

普段と違う帰り道。夕暮れ時の道を今夜の晩御飯を喋りながら歩く二人。
まるで家族のような会話だった。
きっと俺達が、こんな風景があまり前になるのもそう遠くないはずだろう。






そして、次の日・・・・・
「ただいまやー☆」
早朝、何時も学校へ行く時間よりもかなり早く珊瑚ちゃんとイルファさんが帰ってきていた。
リビングまで入ってくるとやっぱりこんな時間じゃ誰もいない。
「誰もいませんね。」
「そうやな・・・まだこんな時間やし。貴明は部屋かな?」
「そうですね・・・・・・あら?」
何かを気付いたように視線を動かし、キッチンの方に目が止まる。
「どないしたんいっちゃん?」
「いえ、なんでもないですよ、ほほほほ。貴明さんは自分の部屋にいるみたいですし行きましょうか、珊瑚様。」
「?」
イルファさんの意味深の反応に、珊瑚ちゃんは『?』マークを浮かべるが構わず俺の部屋に向かった。
そして、俺の部屋の前まで着き勢いよく扉を開けると、ベットにすやすやと眠っている俺に目がけて嬉しそうにベットへ向かってダイブした。
「ただいまや、貴明~~~☆」

ボフ!!

「ぐほぅ!?」
体に伝わる強い衝撃に咽ながら俺は起きた。
珊瑚ちゃんは悪気もへったくれもなく布団越しで俺の上に乗りながら無邪気に喜んでいた。
半身を起す俺に気持ちよさそうに抱きつく珊瑚ちゃん。
なぜ此処に珊瑚ちゃんが居るのか、最悪の起き方をした俺は想像できなかった。
「えへへへへ。貴明はやっぱり抱き心地ええなー。」
「さ、珊瑚ちゃん?」
「ただいまです。貴明さん。」
「イルファさんも・・・いつの間に帰ってきたの?こんな早く帰ってくるなんて、何時もの学校の待ち合わせで会って言ってなかったけ?」
俺の言葉にイルファは、わざとらしく悲しそうに頬に手を当てながら顔を伏せる。
「いえ、予想よりも早く終わりましたので、ですが・・・・貴明さんは私たちとはお会いしたくなかったんですか?私たちは嫌いになりました。」
「へ?あ、いや・・・そんな事は・・・」
なんでそうなるのと思うが、そういう軽はずみの言動は勘弁してほしい。
イルファさんは分ってて言ってるだろうが、俺の胸の中にいる天然のお姫様はそんな冗談は通じないから。
その証拠にイルファさんの言葉を聞いた途端にさっきまでの笑顔は消えてまるでこの世の終わりのような沈んだ表情になる珊瑚ちゃん。
「そうなんかー、貴明・・・・」
その眼には涙も滲み出ていた。
俺は若干苦笑しながらも、泣きそうになっている珊瑚ちゃんの頭を撫でる。
「そんな顔しないくても、珊瑚ちゃんの事はちゃんと好きだよ。」
「ほんまか!」
俺がそう言うと、さっきと打って変わって花が咲いたような華やかな笑顔になる珊瑚ちゃん。
全く感情が、豊かな子だ。
「う、うん。当たり前だよ。」
「わ~♪ウチも貴明の事、スキスキスキーやで☆」
嬉しそうにぎゅっと力強く抱きついてくる。
うっ・・・・・寝起きにこの感触は色々とまずいっす・・・・・・主に性的な意味で。
若干いけない気持ちになりながらも、俺はそんな珊瑚ちゃんの背中を優しく抱きしめながらイルファさんに向って『勘弁してください』と眼で訴えかける。
イルファさんは小さく舌を出して『ごめんなさい』って言ってるようだった。
全くイルファさんは、お茶目なのがたまに傷だな、うん。

「それで、貴明さん。瑠璃さまは部屋ですか?」
「瑠璃ちゃんは・・・・」
はて・・・・何か忘れているような・・・・・・
まだ、寝起きで頭が上手く働かず思い出そうと試みる。
だけど、俺に好きと言われた珊瑚は嬉しさが爆発しそうなぐらいはしゃいでおりその勢いが止まらなく俺に迫ってきていた。
「貴明、ご褒美にちゅーしたるな☆」
「え?珊瑚ちゃんちょっと待っ・・・ん!?」
俺が何か言うよりも先に珊瑚ちゃんは口を塞いできた。
そんな二人を微笑ましそうに、ニコニコ笑顔で見ているイルファさん。
笑ってないで止めて欲しいと・・・・思うだけ無駄だよな、やっぱり。
珊瑚ちゃんの唇の感触に、段々酔いしれそうになりとろーんと蕩けそうになるがそこで、『はっ!?』っと思い出していた。昨日の出来事を。そして、自分の隣に眠るもう一人のお転婆姫の事を。
そ、そういえば・・・なんだかんだで昨日は一緒に俺の布団で寝た様な・・・・・
それを思い出すと、嫌な予感が段々湧いてきてそれを的中しないように、俺はは珊瑚ちゃんから離れようともがく。
だけど全然離れる様子はない。
「もがもがもぁー!」
「ん~~~☆」
「何言ってるかわかりませんよ、貴明さん。」
可笑しそうにクスクスと笑うイルファさんの声を、耳にしながら俺は懸命にもがく。
笑ってる場合じゃないってイルファさん!・・・って。
何故だ!何でこんな時の珊瑚ちゃんの力はこんなにも強いんだ!!
軽くじゃまるで離れない。この小さは腕にどこにこんだけの力が・・・・・って感心してる場合じゃないって。
本気で離しにかかれば離せるだろうがそんな事したら珊瑚ちゃんは本気で泣いてしまう事は分り切っていた。
だからといって、口が閉じていては言葉でも伝えようもない。
このままの状態は・・・・悪くないが、その選択は却下だ。
そしてそんな悠長な事をしてる合間に俺の予感は現実に変わりつつあった。
「ん・・・・五月蠅いで、貴明・・・・」
とうとう隣に寝ているお姫様が起きようとしていた。
予想外のその声に珊瑚ちゃんは視線だけ動かし、イルファさんは笑顔のままで固まり、俺は『やっちまったぜ~!』という某お笑いコンビの顔になっていた。

あー起きちゃダメっすーーーー!!!

と叫ぶ俺の心の声も虚しくあっさり俺の隣に寝ていたお転婆なお姫様、瑠璃ちゃんは起きてしまった。
瑠璃ちゃんは寝惚け眼で自分の前で、キスをしている俺と珊瑚ちゃんを交互に見つめていた。
寝起きでいまいち理解はしてないみたいだった。
そこでやっと珊瑚ちゃんは、俺から口を離し瑠璃ちゃんに向きなおった。
「あれ?瑠璃ちゃんなんでここにいるん・・・・あ、もしかして貴明と一緒に寝たんか?ええなー。」
珊瑚ちゃんのその声を聞いて、少しづつ目が覚めてきたのか瑠璃ちゃんの顔がみるみる不機嫌な表情になっていき捲くし立てるように口を開く。
「な・・・・・・・・・・な、ななななな何でさんちゃんがここにいるん!?それに・・・・・・貴明!!何でさんちゃんに朝からえっちぃー事してんねん!」
「あ、いやこれはね。その・・・」
とりあえず何か言い訳を試みるが、結局瑠璃ちゃんは聞き耳を持ってくれずその凶器である右足を上げた。
ま、まさか・・・・・・
「あたりまえやん瑠璃ちゃん。ウチと貴明はすきすきすきーやから朝のチューぐらい普通やで☆」
「いや、珊瑚ちゃん余計な事言わなくていいから・・・・」

「た、た、貴明のどスケベーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

朝一番からの瑠璃ちゃんの快心の一撃を脳天からもろに食らい俺の意識はそこで途絶れた。
「あーあ、瑠璃ちゃんやり過ぎやでー。」
「ふん、朝からデレデレしてるアホ明が悪いんや。」
「あらあら、瑠璃様は相変わらずのツンデレですね。・・・・・・昨日は、最近練習していた和風の料理をお披露目したのに。」


「なんで分んねん、イルファ!!」


三人の会話を耳にしながら朦朧とする意識の中、貴明はちょっぴりこんな事を考えていた。
瑠璃ちゃんはもちろん好きだけど、瑠璃ちゃんのこのお転婆癖は少しは直すべきかな・・・・・・と割と本気で思ったのだった。











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