由真と付き合うようになって一カ月余り……俺達の関係は前とあまり変化はなかった。
なんだかんだ言いながら二人でいる事が前から結構あった。
ゲーセンも行ったしマクドにも寄る事も多く体の良い友達と言う関係が長かったせいで今更何を良いのかが分からないのが本音だ。
最も、そうは思ってはいても俺も思春期真っ只中の男。
好きな彼女の事を思い、したい事は少しは思いつく。
だが、如何せん出会いから喧嘩ばっかで勝負だの犬猿の仲を続けていたせいで今更素直にいう事も言いづらい。
俺としてはもう少し掘り下げた事とかもしてみたいんだけどな……キスもタワーでした以来一回もないし手を繋ぐなんて事もしてない。
由真の方は、どう思ってるんだろか?……

放課後。
二人で今日発売したばかりの漫画を読みに俺の部屋に来ていた。
こうしてだらだらと過ごす事は俺達では多かった。
そして先に読み終えた由真は本を置いて手持無沙汰で暇を持て余しおり何故か部屋の物色を始めていた。
得に見られて困るものもない俺は好きにさせる事にした。
俺の方は読み終わるにはあと少しかかりそうだしな。
「あ、これ買ったんだ?」
昨日、プレイしたままの状態で放置していたハードと新作の格ゲーソフトを見つけた由真は手に持ち聞いてきた。
「ああ。やりたかったらプレイしても良いぞ」
「うん、やる」
多少は癖のあるゲームだが何時もゲーセンでプレイしてるゲームと操作的にはそこまで差があるわけでもないから比較的容易に入りこめれるだろう。
俺が読み終わるまでこれで時間つぶしして貰う事としよう。
しかし、ゲームを起動した由真はコントローラーを二つ持ち一つを俺に差し出してきた。
「対戦。一人じゃつまらないから」
「何?俺はまだ読み終わってないんぞ」
「そんなの後で良いじゃない。付き合ってよ」
何とも勝手な理由である。
「今、良い所なんだよ。せめて後、15分待ってくれ」
「駄目。あんたは私とゲームやるのよ」
「少しぐらい待てよ」
「嫌だ!だって一人は……良いから付き合え!!」
相変わらずの由真に呆れつつ俺の中ではちょっとした悪だくみが浮かんできた。
何時ものようにあれをやれば由真と色々と出来るんじゃないか?っと。
少し卑怯と思いつつ決心し本をゆっくり閉じて、挑戦を叩きつけた。

「よし、やってやる。だけど、負けた方は勝った方の言う事を一つ聞く事……良いな?」
「ふふっ、別に良いわよ。負けてから後悔しても知らないからね」
「それはこっちの台詞だっての」
コントローラーを互いに持ちいざ尋常に勝負……!
そして結果は………

「な、何でこうなるのよ……」

10戦中10勝0敗。
俺の圧勝だった。
いくら新作と言ってもある程度キャラの癖や対処法は知っている。
今回初プレイの由真では相手になる筈もなかった。
そして、負け続けた由真は絶望感で床に膝まつき完全に消沈している。
「完敗だな。約束……覚えてるよな由真」
「わ、分かってるわよ。何でも言いなさいよ!!」
「それじゃ……キスしても良いか?」
「え…………なっ何ですって!?」
予想外の俺の願いに由真は完全に固まっていた。
俺としてもこんな風にしたくはなかったが何かきっかけが無いと言い辛いものだ。
ヘタレと言うなら言ってくれて構わないぞ。
真剣な目で見つめる俺から気押されたのか由真は少し後ろに下がった。
「な、なんでそんな事なんか……」
「可笑しいか?」
「だ、だってあんたらしくないよ。こんなの」
「らしくないって何だ?俺と由真は付き合ってるんだろう?大好きな女の子とキスをしたいって思うのは駄目なのか」
「だ、駄目じゃないけど……」
恥ずかしがって中々頷いてくれない。
「嫌なら他のにするけどさ……俺だって由真と色々としたいんだよ。でも、中々素直に言えなくて……由真はどうなんだ?」
好きだから、もっと触れたいと思うのは自然な筈だ。
由真も、何度か口籠りながらもやっと頷いてくれた。
「……違わないよ」
「だったら……」
「でも、こう言う事はこんな勝負無しでやって欲しい。わ、私だって本当は貴明ともっと色々としたい……でも、私から言うは恥ずかしかったしHな子って思われそうでだから…こ、こう言うのは男がリードするもんでしょう?少しはあんたが空気を読みなさいよ!」
照れた由真は少し責めるような視線を向けてきた。
少し投げやりな気もするけど、俺と同じ事を思っていた事を知り嬉しくて思わず抱きしめた。
「た、貴明?」
「そうだな……ごめん。これからはもっと素直にしたい事を言うよ」
こんな大事な事を賭けでするような事じゃないよな。
「それじゃ、これは勝負関係無しでのお願いっと言う事で良いか?」
「……うん。良いよ」
瞳を閉じゆっくりと近づく互いの顔。
久々に触れあった唇は凄く柔らかくて由真の吐息を感じて胸がはち切れそうなほど強く高鳴った。
これからは、素直に自分の気持ちを彼女に伝えよう。
由真の事をもっと感じたいから……


あれから、俺達は少しだけ変わっていた。
前よりも素直に。
前よりも近くに。
本当の意味で恋人と言う関係になれた気がした。
そして、後日……俺の家では。

「で、なんでこんな事になってる訳?」
「だって、約束だったじゃん。一つ言う事を聞くって、あの時のキスは無効だしな」
「それはそうだけど……だからって」
プルプルと震える由真の口から大喝采が響き俺の家を震わした。

「メイド服着せる事無いでしょう!!!!!!!!!!!!!」

フリフリのミニスカメイド服を着せられた由真は顔全体を真っ赤に染めながら恨めしい目で俺を睨んできた。
素直になるって決めたから言っただけなんだけど……
「可愛いから良いじゃないか」
「そういう問題じゃない!なんでよりにもよってメイド服なのよ」
「由真に似合うと思ったからだよ。お前は可愛いから」
率直な意見に由真は言葉に詰まり動揺したのか視線をキョロキョロと忙しなく泳がしていた。
「っ!?……だ、だからってこんなの選ぶ事無いじゃない。あ、ああああんたがこんな変態だったなんて知らなかったわ」
ほっとけ。
「しょうがないな……そんなに嫌なら、もう一度ゲームで決めるか?勝ったら着替えても良いぞ」
「ほ、本当ね!男に二言は無しよ」
「ああ、だけど負けたらまた罰追加な」
「の、望む所よ!!」
しかし、頭に完全に血が上った由真では相手なる訳もなく結果は……言うまでもないよな。

~End~







inserted by FC2 system