今の季節は夏。
学生にとっては長い休みがある有難い季節でもある。
だけど、今年は一際暑く毎日がだるい。
そんな中でも俺とちゃるは、毎日のようにデートを重ねていた。
だけど、今日は少しだけ違っていた。
「もふっ・・・・手伝い?」
ちゃるのお気に入りのハナさんの店で、豚玉を頬張りながら俺は聞き返した。
「うん。先輩に手伝って欲しい事がある・・・・・・・駄目?」
「いや、全然駄目じゃないよ。俺に出来る事なら何でも手伝うけど・・・・・何するの?」
「それは・・・・来てのお楽しみ。」
「そっか。」
「うん。明日、私の家に来て。」
「分かったよ。」
「ん、待ってる♪」
俺の返事を嬉しそうに頷き、ちゃるは自分のイカ玉を頬張る。
(・・・・一体何をするんだろうな。)
若干気になりながらも、俺は残りの豚玉を平らげた。




――そして、次の日・・・・・――

俺は先日の約束の通り朝からちゃるの家に向かっていた。
「暑い・・・・・」
だけど、日差しのあまりの暑さに俺の足取りは重かった。
日差しが暑いと言うよりはどっちかと言うと痛い。
朝からでもこんな日差しなんて気が滅入ってくる。
一人で歩いていると余計そう思う。
(・・・・・こんな日はクーラーの効いた部屋に籠っていたいよ。もしくは、プールに行きたい。海でも良いけどさ。)
なんともヘタレな言葉だが暑いもんは暑いから仕方がない。
でも、今日はちゃるの家に行く約束だからな。
海やプールは今度ちゃるを誘って行くか・・・・・ちゃるがどんな水着着るのか楽しみだし。
「よし!」
頬を叩いて気を入れなおして俺は残りの道のりを急いだ。
そうして、汗だくになりながらもなんとかちゃるの家に到着。
(相変わらず、すごい家だよな・・・・・)
向坂の家も相当でかいがちゃるの家も、負けず劣らずすごい。
豪邸と言うのはこういうのを指すんだろうな。
しかし何度かは来てはいるけど、これだけ立派だとなんか入るのに気後れする。
だけど、このままここに突っ立ていてもしょうがないよな。
ちゃるも待っていることだし。
俺は立派な門を抜けて、玄関先まで行きインターホンを押した。
そして、待つこと数秒。
『おう、誰だい。』
厳格な声でロクさんが出てきた。
「あ、俺です。貴明です。」
『お?坊か。良いぜ入ってくんなー。』
「分かりました。」
ロクさんの言われるままに俺は玄関に入る。
と、そこには・・・・・


『坊!!よくいらしてくれやした!!!』

「うわぁ!?」


家に入るなり角刈りやスキンヘッド、完璧そっち系の人達が廊下にぎっしり並んで俺を大声で出迎えてくれた。
な、なんだこれ・・・・・
「よー坊。暑いのに良く来てくれたな。お嬢も待ってからよ。部屋に案内するぜ。」
出迎えた人たちの奥からロクさんの声が聞こえた。
人波の先に視線を移すと、ロクさんが奥から歩いてくるのが見えた。
「お願いします。・・・て言うか、なんですかこの人たちは。」
俺は指も指すのもなんだか怖い気がして、俺の前まで来たロクさんにこの現状を聞くだけにする。
「ん、こいつらかい。こいつらはうちの組の若い連中ですよ。」
「そうなんですか・・・・・けど、なんで俺の出迎えを?」
「そいつぁは、昨日の晩にお嬢から今日坊が来るんで、出迎え宜しくと頼まれやしてね。これは盛大にお出迎えしないと罰が当たると思ったわけでありやす。」
「そ、そうなんですか・・・・それで、組の人達を。」
「それもありやすが、ウチの若い衆も坊には興味がありやしてね。一度会ってみたいと、思ってたみたいなんでこの気を利用させてもらいやした。」
「は、はぁー・・」
気の抜けた返事をするが、変に視線を感じて周りを見回すと、皆俺を舐めるようにじろじろ見ていた。
と言うか、目つきが悪いからどうしても睨んでる風にしか見えない。
俺は小声でロクさんに聞いてみた。
「あの・・・・俺ってもしかしてこの人たちに嫌われてます?」
「お、どうしてですかい。」
「い、いや。なんかずっと睨まれる気がして・・・・・・」
「あ〜ははははははっ!!!何肝がちいせー事言ってるんですかい。」
豪快に笑いバンと俺の背中を叩く。
「痛いですって!」
「そんな心配しなくても、俺達全員お嬢を含め坊にも信頼は寄せておりますぜ。」
「え、俺にもですか?」
意外な顔をする俺に、ロクさんはにんまりと笑った。
「あたりまえでありやしょう。お嬢が、ただ一人自分で認めて全てを捧げた男性。そしてあのご隠居さえも一目置いている坊なら、問題なしでさぁ。それにあっしの威圧にも、億さずお嬢の為に向かってきた坊の男意気、認める以外ないでしょう。」
「そ、そうですか・・・なんだがそう言われると照れますね。」
「坊は純情だなー。これからウチの組をしょって行く男ならもっと胸を張ってくんな!」
「あ、え?それはどういう意味・・・・」
「さ!お前ら、坊をお嬢の部屋にお連れするんだ!しっかり出迎えしろよ!!」


「分かりやした!アニキ!!」


駄目だロクさん全然俺の話聞いてない。
ロクさんの言葉に、豪快に返事をする組の人たち。
そして俺が通るたんびに「ゆっくりしていってください!」と矢継ぎ早に言ってくる組の若い衆の人達。
な、なんか複雑な気分だ・・・・・・・・
組の人たちの盛大な(?)お出迎えを受けながらロクさんに連れられて俺は、ちゃるの部屋に向かった。


そして、ちゃるの部屋の前までに来る頃には俺はかなり疲労してていた。
ここに来るまで一体何人のお出迎えを受けただろうか・・・・・・
(なんで、家に来ただけでこんなに疲れないといけないんだ・・・・・)
そしてロクさんは、ちゃるの部屋のドアの前で、真剣な表情に変わり静かに床に正座をする。
「お嬢。坊を連れてきやした。」
「うん。入って。」
「失礼しやす。」
ちゃるの返事を受けてロクさんは静かに障子を開けて俺を部屋に通すように脇にずれてくれた。
「ど、どうも。」
俺が中に入るとロクさんは、「ごゆっくり・・・」と頭を垂れて去っていった。
そして部屋に入るなり漂うインク臭の匂いが鼻についた。
ちゃるは部屋の中央に置かれているテーブルに何やら作業をしているようだが・・・・・何をしているのだうか?
「おはよう、ちゃる。」
「おはよう先輩。」
俺が声をかけるとちゃるは手を止めて俺のほうに振り向いてきてくれた。
「?先輩何か疲れてないか。」
「あ、分かる。」
「うん、先輩は何時も見てるから。」
そう言われるとなんだかこそばゆいです、ちゃるさん。
若干照れながらも、俺はここまで来る時にあった出来事をかいつまんで話した。
そして俺の話を聞き終えたちゃるは眉間に皺を寄せて不機嫌な表情になっていた。
「ロク・・・・・・普通にお出迎えしてって言ったのに。」
「まーまーちゃる。俺も驚いたけど、嫌じゃなかったし。みんなちゃるの事が好きだからやってる事なんだかさ。良いじゃないか。」
「うん。分かっているけど、限度の問題。現に先輩困惑している。」
「それは・・・・まーそうだけど。」
「ロクは後でお仕置き決定。」
え、マジですか。
「は、はははは。お手柔らかにしてあげてね。」
「大丈夫、お仕置き道具は沢山あるから。」
親指を立てて、GJとジェスチャーで表現する。
それは大丈夫と言うんだろうか・・・・・・・



「ところでさっきまで何をしてたの?」
「これは、ペン入れをしているの。」
「ペン入れ?」
イマイチ聞きなれない単語に俺は首を傾げる。
「先輩。私が前にマンガを描いているって言ったのは覚えている?」
「あ・・・うん。覚えているよ。」
確か俺が仮病で休んでいた時、家に来て吉岡さんと話してたな。
あんまりあの時の事は思い出したくはないけどね。
休んだ理由があまりにも情けなさ過ぎるから。
「実は、来週にイベントがあってその本の入稿の締め切りが明日までなの。」
「うん、それで。」
「だけど、・・・作業が全然終わってなくてこのままじゃ間に合わない。だから・・・・・」
「もしかして、今日俺を呼んだのはそれを手伝ってほしくて。」
「うん。」
俺の言葉にコクッと頷く。
なるほどね・・・・・・俺も手伝いたいのは山々なんだが。
「俺そんなマンガの経験なんて全然ないよ。」
「大丈夫。先輩には簡単な作業だけしてもらうから。難しいのは全部私がやる。」
真剣な目で俺を見つめるちゃる。
良く見るとちゃるの顔にはどこなく疲れが見えている。
それに、目も少し眠たそうだった。
こんな目をされちゃ断れないな・・・・・ま、もとより断るつもりはないけど。
「うん分った。手伝うよ。俺は何をすればいいの。」
「ありがとう先輩・・・・・・」
俺が了承してくれた事にちゃるは嬉しそうな顔をして微笑む。
こんな顔をされたら俄然やる気が出てくる。
さて、俺も全力で手伝いますか!






もくもくと作業をし始めて、あれから2時間近くが経とうとしていた。
時計の針はもう昼を過ぎている。
俺がやっているのは、ベタとゴムかけと言う作業だった。
それ以外の作業はちゃるがやっている。
教えてもらうと結構単純な作業なんだがやってみると中々難しい。
時間がないからペン入れをし終えたやつはドライヤーで乾かして、ゴムがけして鉛筆の線を消す。
ベタはベタでペン入れをした線からはみ出さないように塗るのが結構神経を使う。
ひたすらこの作業の繰り返しだ。
だけど俺が手惑う度にちゃるが、親身になって教えてくれるのでとてもやり易くはあった。
(マンガって読むのは簡単だけど、作るのはこんなにも大変なんだな・・・・・・知らなかったよ。)
一所懸命やったお陰か、時間が経った今ではこの作業ぐらいなら問題なく処理できるぐらいには慣れた。
しかし、今になってみると・・・・グロイ絵のマンガだよな。
さっきまでは作業を気をつけるだけで手一杯だったから描いてある絵に気にかける余裕なんてなかったらから分からなかったけど、なんでメイドでゾンビなんだ?
俺は動かしている手を止めて顔を上げ向かいに座っているちゃるを覗く。
ちゃるは真剣な表情でペン入れをしていた。
(なんだかこれだけ一生懸命な目をしているちゃるは、初めてみるかも・・・・・・)
今までが、一生懸命にしてなかった訳じゃないけどなんだか何時もと違う真剣身があった。
それだけ、マンガが好きなんだろうなー。
だけど、ジッと見られているのが気づいたのかちゃるも手を止めて顔を上げた。
「何、先輩?何か分からない所でもあった。」
「え・・・あ、いや。・・・・・楽しそうに作業してるなーって思ってね。」
俺の言葉にちゃるは目をぱちぱちして不思議な顔をしている。
「うん、楽しい。・・・・けど、楽しいのはこの作業だけじゃない。」
「え?それはどうゆう事。」
「・・・・・内緒。」
何所なく顔を赤らめて誤魔化すちゃるに、俺は拍子ぬけしてしまった。
「ちゃる〜、そう言われると余計に気になるよー。」
「今は駄目。後で教えるから・・・・・・・それよりも今は作業に専念する事、貴明三等兵。」
何だか有無を言わさない雰囲気を出してるちゃるにこれ以上聞けずに俺はこう返事するしかなかった。
「サーイエッサー。軍曹殿。」
「うん。お願い。」
まるでこのみとしてるようなやりとりの会話を交わし、俺達は再び作業に取り掛かった。
結局ちゃるの言葉を気になりつつも、俺は作業に没頭した。
これで失敗してちゃるの足を引っ張ったら本末転倒だからな。
手伝うと言った以上しっかりやらないと。

それからさらに数時間後・・・・・
「終わったー・・・・・」
最後の原稿のベタを塗り終わった後、原稿用紙をちゃるに渡し俺は持っていた筆をテーブルに置いて床に寝ころんだ。
壁に掛けられてる時計を見ると、既に19時を過ぎていた。
「もうこんな時間か。結構な時間やってたな・・・・・・」
ずっと同じ姿勢でやってたから体が固くなっている。
固まった筋肉をほぐすように体を伸ばす俺にちゃるは微笑みながら労いの言葉をかけてくれた。
「先輩、ご苦労さま。」
「あ、ごめん。俺だけ寝ころんだら、悪いよね。」
俺は慌てて起き上がろうとするが、ちゃるはそれを止めた。
「気にしなくて良い。先輩は、私の手伝いをしてくれたんだから、ゆっくり休んでて。その間に何かお茶でも淹れてくるから。」
「そう・・・・・じゃお言葉に甘えよっかな。」
「うん。」
そう言ってちゃるは俺の横を通り過ぎて部屋を出て行く。
それにしてもマンガの手伝いね・・・・・・でも何でこんな切羽詰った状況で俺に頼んだんだろう?
「もっと早くに頼んでくれても、良いのに。」
「そりゃー、坊に迷惑をかけたくないからでしょうよ。」

「うぉ!?」

思わず独り言を呟いた俺に、いつの間に居たのかロクさんからの返事があった。
驚いた俺は思わず起き上がり、後ろに後すざる。
「よ、坊。お疲れさん。」
そんな俺の反応が楽しいのかニカッと笑っている。
「びっくりした・・・・・ロクさん何時の間に居たんですか。」
「そりゃ今さっきですよ。それよりも、坊。部屋に、長い時間男女が二人仲良く居たのに何もないたぁ、どうゆう事ですかい?」
「な、何がです。」
「何は決まってるでしょう。ご隠居も認める二人は将来婚姻をするつもりなんでしょう。なら遠慮せずにくんずほぐれずちちくりあっても全然かまゃーしませんぜ。」
くんずほぐれずやちちくりあうとか、なんか微妙に古い言葉だなー。
それに結婚てまだ早いような気が・・・・・・それよりも。
「まさか覗いてたんですか?」
「いや、そんな野暮な事はしやしませんぜ。せいぜい聞き耳を立ててたぐらいですよ。」
それもなんか嫌だな・・・・・・
「い、いや今日はちゃるのマンガの手伝いをしに来たんですから、それは・・・・」
「ん、それは坊にとってお嬢の体はマンガ以下の興味の対象外と言う事ですかい?」
俺の肩を掴みニヒルに笑いかけてくる。
けど、口は笑ってはいるが、目が笑ってないロクさんの顔は正直・・・・怖い。
「そんな訳ないですよ。ちゃるみたいに可愛い子に劣情を感じない奴は男じゃないです。」
「お、そうでしょう。そうでしょう。家に若い奴らもお嬢は人気ありやすからねー。」
「そ、そうなんですか。」
「お嬢はウチの組の女神ですかね。ま、それなら坊も遠慮せずに、やっちまうっていうのが男ってもん・・・・・」
「ロク・・・・・・何してるの?」
後ろから何所か冷めた声が聞こえてきた瞬間ロクさんが見て分かるぐらいビクッと震えた。
ぎぎぎぎぎっと錆びたおもちゃみたいな擬音を鳴らしながら、ゆっくり後ろに振り向くロクさん。
その先には・・・・・

「お、お嬢!!」

手にお茶が乗ったお盆を持っているちゃるが佇んでいた。
俺の位置からだとメガネに光が当たってちゃるの目は見えないが、ロクさんの怯える表情を見ればちゃるに睨まれてるのは明らかだった。
「ロク、先輩に変な事吹きこんだら駄目。」
「い、いやあっしはお嬢の為を思ってでしてね・・・・」
「余計なお世話。」
「で、でもお嬢・・・・・」
「良いから出て行く。」
「・・・・・・はい。」
自分よりも二周り以上も小さいちゃるに完全に負けて、とぼとぼと部屋を出て行くロクさん。
何だかロクさんが不憫に思えてきた気がする。
「ロク。」
「はい。なんですお嬢。」
「・・・・後でお仕置きあるから、覚悟しておいて。」
んなぁ!?お、お嬢それだけは勘弁を!!」
「駄目。今日のロクは調子乗りすぎ。」
「おおおおお、お、お嬢〜〜〜〜!!!!」
「ハナも呼んでるから覚悟して。」
大の大人が少女に必死に懇願する姿を目の当たりにする俺。
ま、マジでロクさんが不憫に覚えてきた・・・・・


結局お仕置きがなくなる事が無かったロクさんは完全に意志消沈して去っていった。
ちゃるは軽くため息を吐きながらテーブルにお盆を置き俺にお茶を差し出してくれた。
「はい、先輩。」
「あ、ありがとう。」
「うん。」
そのままちゃるは俺の横に座って、自分のお茶に口につける。
俺もなんかフォローを入れるべきなんだろうか・・・・・・
あれじゃあまりにもロクさんが不憫過ぎる。
そんな事考えてると、ちゃるからお礼の言葉がきた。
「先輩。今日はありがとう。」
「ん、何が?」
「先輩に手伝って貰わなければ今日中には終わらなかった。」
「別にお礼は良いよ。結構俺も楽しかったしさ、貴重な経験になったよ。」
素直に感想を言う俺に一瞬驚くちゃるだけど、直ぐに嬉しそうな顔になり俺に体を擦り寄せてきた。
そんな彼女に俺も自然に腕を回し抱き寄せる。
「うん、楽しかったなら良かった。・・・・・・先輩は何時も優しいから好きだ。」
「そうかな。・・・優柔不断なだけだと思うけど。」
褒められるのが照れくさくなり、恥ずかしそうに鼻の頭を掻きながら顔を逸らしてしまう。
そんな俺にちゃるはとても愛しいそうに微笑んでいた。
「先輩照れてる・・・・可愛い。」
「ちゃる・・・・」
俺はちゃると見詰め合って、段々吸い寄せられるように近づいていき。
ちゅっと可愛らしい音と感触を感じて俺たちの唇は重なった。
俺の腕はちゃるの腰に回して離れないように抱き寄せる。
ちゃるもそんな俺の思いに答えるように、きつく抱きしめてきた。
しばらく、ちゃるの柔らかい感触に身を委ねていたら急にちゃるの腕が緩んでストンと落ちた。
「・・・・ちゃる?」
俺は気になって、唇を離して顔を見つめるとちゃるは眠たそうに眼を擦っていた。
「大丈夫・・・・ちょっと昨日も遅くまで作業してたから。」
「眠いの?」
「大丈夫・・・・・・・」
フラフラと揺れて全然大丈夫に見えない。
原稿が終わって気が緩んだんだろうか。
全く・・・・こんなにふらふらになるまで、1人で頑張るなんてちゃるは相変わらずだ。
「ほらちゃるおいで。」
「?」
俺は自分の足にぽんぽんと手を叩く。
最初は意味が分からなかったちゃるだったが、俺の意図を知ったとたん嬉しそうに笑って寝ころび頭を俺の脚の上に乗せてきた。
「ちゃる、あんまり無茶するなよ。」
「別に無茶はしてない・・・・」
そんな眠たそうな状態で言われても説得力がない。
全く負けず嫌いとと言うか、なんと言うか・・・・・
俺はちゃるの綺麗な狐色の髪を優しく梳かしながら話す。
「ちゃる。今度からはイベントとかあったら、こんな状態になる前に俺を呼びなよ。」
「それは・・・・・先輩に迷惑がかかる。今回は、駄目だったけど次は・・・」
「そんな事ないよ。俺は・・・・・・ちゃると一緒に居るだけで楽しんだかさ。」
「先輩・・・うん、私も・・・先輩となら・・・・何をしても楽し・・・い。」
眠気が限界まで来たのか、ちゃるは途切れ途切れになりながらも話す。
「なら、今度から、遠慮なく俺を呼ぶ事、OK。」
「うん。・・分かっ・・た。今度からは・・・セン・・パ・・イも・・・一緒・・に・・・・」
言葉を言い終わる前にちゃるの口からは、安やらか寝息が聞こえきた。
「お休み・・・・ちゃる。」
こうして俺とちゃるとの夏の思い出が、また一ページ増えた。
俺達の夏はまだ始まったばかりだ・・・・・・・








そして後日・・・・
「先輩、イベントの売り子手伝ってもらっても良いか?」
「ああ、売り子は良いけど・・・・・・これなに。」
「コスプレ。私と一緒にこれを着て売り子をする。」
「こ、コスプレ?」
「ん先輩遠慮なく言っていってくれた。だから一緒にやる。」
「や、確かに言いましたけど・・・・・・それよりもなんで何で女物の衣装なのかなー?」
「先輩可愛いから大丈夫。」


「そう言う問題っすか!?」


これも思い出に・・・・なるのかな?








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