「ナナちゃんって、年上の男の人と付き合ってるんだよね?」
「え!?それは…えっと……」
いきなり聞かれたクラスメイトの言葉に照れ臭そうに俯いてしまう。
「もう、ぶしつけに聞かないの。ナナちゃん照れちゃってるじゃない」
「あー、でも気になってたんだもん。沙菜ちゃんは気にならないの?」
「それはそうだけど…」
「で、どうなの?ナナちゃん」
「え、あ、あぅ………」
恥ずかしさで益々顔を赤らめてしまうの私の顔を見て、『はい』の返事と受け取ったのか女子の間できゃ~~♪と声が上がる。
今のクラスの間で私の事はちょっとした話題になっていた。
歳も違えば学校も違う。
しかも相手は高校生。
何度も会っている内にクラスの人にも見られており、話題にならない方が可笑しいかもしれない。
傍から見たら、恋人同士に見えないだろうけどでも、私の気持ちは本気。
小さいから、子供だからはっきりと自分の気持ちを言葉に出来る自信はないけれど私はお兄ちゃんの事が本当に大好きなの。
友達を送りだす時必死になってくれた時よりずっと。
初めて告白をしたあの公園の時よりずっとずっと。
私の気持ちは日にちが経つ事に、お兄ちゃんとの思い出が増える度に大きく膨れ上がっていく。
だけど、今の私達はちょっと曖昧な関係。
さっきの言葉にはっきり『うん』って返事が出来なかったのはそれのせいもある。
初めての告白の時、お兄ちゃんは私の事を『妹』でなら良いよって言ってくれた。
一生懸命の告白。
精一杯の私の気持ち。
ふられる事も、相手にされない事も分かっていた。
でも、お兄ちゃんは初めて出会った時のままの優しい顔をして言ってくれた。
私は嬉しかった。
お兄ちゃんは私の事を見てくれている。
それがたとえ、血の繋がらない妹だとしても、幻の様な関係でも私は嬉しかった。
だって、『さようなら』じゃないならまた会えるから。
『またね』なら、次があるから。
でも最近、心の中で小さく囁く声が聞こえる。
それはとても小さく聞きとりずらい。
だけど、私の中ではなんとなくその言葉の意味が伝わっていた。

“それでいいの”
分からない。

“もっと仲良くなりたいでしょう”

知らない。

“本当は自分にだけ見て欲しい癖に”

知らない!!

自分の中にある不安が膨らむ。
お兄ちゃんと一緒に居ると、楽しくて、暖かくて、ドキドキするけど、それと同じように不安と寂しさ、胸の奥がチクチクする。
「あ…」
放課後になり考え事をしているといつの間にか私は、お兄ちゃんの学校に来ていた。
他の生徒に珍しそうな視線を感じる。
背中に背負った鞄の紐をギュッと握る。
お兄ちゃんに会いたい……けど、今はどんな顔して良いか分からない。
今日は…帰ろう。
きっと明日になれば、笑顔で会えると思うから。
「あら…貴方は」
「え?」
まるで歌声の様な澄んだ声が聞こえ足を止める。
「たしか…菜々子ちゃん。だったよね?」
「あ、はい」
腰まで伸ばした赤いさらさらした髪に大人っぽい雰囲気を持っている人が立っていた。
確か…名前は向坂環お姉ちゃん。
お兄ちゃんの幼馴染で最近こっちに引っ越してきたってお兄ちゃんが言ってた。
「タカ坊に会いに来たの?」
「…はい」
「そう…でも残念。今日はタカ坊遅くなるみたいよ」
「え…何かあったんですか?」
「ええ。前のテストで、赤点だったらしくてね。今は補習中。だからあれほど日ごろから予習はするようにって言っておいたのに…全く仕方がないわね、あの子は」
お兄ちゃんの事を思いだしているのかさっきよりも穏やかに優しく笑う環お姉ちゃんを見た時私の心はズキリ痛んだ。
そうなんだ…環お姉ちゃんもお兄ちゃんの事……
あれだけ綺麗だもんね。
男の子なら絶対、放っておかないよね。
それにお兄ちゃんは私の事は単なる“妹”としか見てないし。
でも良いもん。それでも、一緒に居られるならそれで。
良いんだ…もん。
そう必死に言いきかせる。
だけど、溢れる気持ちは止まらず流れ出す。
「え?ち、ちょっと菜々子ちゃん!?どうしたの」
「うっ…くっ…ううぅ…」
必死に抑えようとするけど、私の心から漏れる気持ちは止まらなかった。
悲しみが涙となって頬を伝う。
「えっと…菜々子ちゃん。ちょっと、こっちにいらっしゃい」
環お姉ちゃんは周りの視線から庇いながら泣きじゃくる私の手を引いて人気のない所まで歩く。

そして、学校の中庭に私は連れてこられた私はベンチに座り服の袖で涙を拭った。
「はい、ハンカチ」
「ありがとうございます……」
ハンカチを受け取り涙を拭う。
暫くすると段々落ち着いてきて涙も収まってきた。
「その…すみません。急に泣いちゃって」
「別に気にしなくて良いのよ」
申し訳なく謝る私に、向坂さんは優しく答えるだけで何も聞いてこなかった。
放課後になっている今では中庭はひっそりとしており、遠くから運動部の声が聞こえるだけ。
どれぐらい経っただろうか、少しづつ夕陽が濃くなってきた頃、環お姉ちゃんがゆっくりと私の名前を呼んだ。
「菜々子ちゃん……」
「は、はい」
「最近ね……タカ坊は、貴方の事ばかり話してるわ」
「……え?」
言葉の意味が分からず私の動きが止まる。
「今日は、アイスを食べに行ってチョコにするかストルベリーにするか一生懸命悩んでたとか。商店街に行って大きなぬいぐるみを見て楽しそうにはしゃいでたとか、本当に楽しそうに話して」
「……」
「何時も菜々子ちゃんの事ばかりでちょっと妬けちゃうぐらいね」
私の今の気持ちを知っている様な慰めるように囁くその言葉に私は必死に耳を傾ける。
「だから、大丈夫よ。不安になる事もあるかもしれないけど、悲しくなっちゃう事もあるかもしれないけど、タカ坊は奥手で鈍感なだけ。きっと菜々子ちゃんの事をとても大切に思ってると思うわ」
「お兄ちゃん……」
「だから、焦らなくて良いの。今の気持ちを大切にしていればきっとタカ坊にも伝わるから」
私の手を握り優しく話しかけてくれる環お姉ちゃんの言葉が心に深く浸み渡り少し心の中にあるモヤモヤが薄れた気がした。
トクントクンと心が鳴り心の奥から聞こえる自分の声。
それは、何時も感じていた悲しい感じではなくとても穏やかで温かい。
なんとなくだけど、私は人を好きなるって事をほんの僅か分かった気がした。
微笑む私を見て少しだけ環お姉ちゃんは意地悪な顔をして話す。
「ふふっ。菜々子ちゃん、あまり泣いてばかりいたら私がタカ坊を誘惑して取っちゃうかもしれないわよ?それにタカ坊ああ見えて人気もだから奥手に回ってちゃ他の子に……」
「そ、それだけはダメ!!」
「なら、泣いてないでタカ坊に気持ちをぶつけるぐらいでいかなきゃ。タカ坊は筋金入りの鈍感君だから、ちゃんと態度に出さないと気づかないからね。さ、行ってらっしゃい。もうそろそろ補習も終わる頃でしょうし今から行けばもしかしたら会えるかもしれないわよ」
「う、うん!その…ありがとう。向坂お姉ちゃん」
「ええ、頑張ってね。菜々子ちゃん」

手振って見送る環お姉ちゃんを背に私はしっかりと足を踏み込んで正門の方へ駆ける。
そして、見知った丁度後ろ姿を姿を見つけ私は元気一杯に声を振り絞った。
「お兄ちゃん~~!」
「うわぁっと…菜々子ちゃん?」
私の声に振り向いたその大きな体に飛びついて、精一杯の笑顔を浮かべ自分の気持ちを言葉にした。

「お兄ちゃん。私…お兄ちゃんの事……」

~End~



***後書き***
書きたいキャラは居るけど、どうしても今まで書いてるページじゃ無理な者もありますので新しく作りました。
このSSを考えていたら眠れなくなり今日はかなり寝不足気味ですが…(;^^)
基本的に今まで書いてない様なキャラを書いていこうかと思ってます。
菜々子とか愛佳とか郁乃とかね。
メインで書いてるのは姫百合姉妹とHMX17姉妹ですが、こちらでも出るかもしれません。
もしかしたら拍手にアップした没ネタ集もこっちに吸収されるかも…今の所どうするか考えてませんがそうなるかもしれません。
小ネタなので大体1シーン半ぐらい程度しか感がてないのでかなり短いです。
これで、草壁とか書けれなかったキャラを書けたらいいなーっと思ってます。w

初の小ネタ話は、菜々子です。
昔一度だけ書いたけどそれ以降全く書いてませんね。
いや、もう一回書こうと思ったけど会えなく断念した記憶が……あのネタはどんな風だったかな?
もう忘れてます。(;^^)
データもないですしね。
成るべく菜々子の心中の語り風に書いてあるのであえて難しい漢字とかは使わずあえて小学生らしく簡単な言葉で表現してます。
旨く菜々子の気持ちが出ていれば良いなーっと思います。
やっぱり年齢差の恋愛って厳しいですしね。
互いに未成熟なら尚更ね。
ただ、こう書いておきながら原作のラスト前での貴明は菜々子を振るんだよなー。
俺的にはありえねー貴明に怒りの鉄拳をお見舞いしたいぜ。www






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