お姉ちゃんに、先程慌ててた様子で家に帰ってきた私を気にして部屋に入ってきた。そして今日あった事を恥ずかしそうに枕をぎゅっと抱きしめながら話した。
「まぁまぁ♪ツボミちゃんたら大胆ですわ♪」
その話を聞いたお姉ちゃんはぽわわーんと、キラキラした効果音が消えてきそうな表情を出しながら惚けた顔でうっとりしていた。
「でも、会う約束も忘れて慌てて帰ってきてしまうなんてツボミちゃん可愛いですわ♪それに、あんな事まで……まぁまぁまぁ♪」
「お、お姉ちゃん。恥ずかしいからあまり言わないでってば…」
「ああ、照れるツボミちゃんも良いですわ♪」
現在急上昇中で妄想を膨らますお姉ちゃんに言われて、私は頬を真っ赤に染めて照れ笑いを浮かべるしかなかった。
お姉ちゃんに離せばこうなるのは分かってはいたし、それにこんなはしたない事言うなんてすっごい恥ずかしいんだけど、帰りが遅い私を何時も心配してそして誰よりも応援してくれてたお姉ちゃんだからそこちゃんと言いたかった。
と、建前はそうなんだけど本当は誰かにちょっと自慢したかっただけなんだけどね。えへへっ。
自分でも大胆な行動にすっごい驚いてるけど、しょうがないよね。
だって、それだけ大好きで気になる人なんだもん。


そう、あの人と会えたのは一年ぐらい前の日。
しつこいナンパに絡まれて誰も助けてくれず泣きそうなぐらい悲しかった。だけど、その時まるでお伽話の王子様の様に現れて救ってくれたのが彼だった。
見た目は少し気だるそうでちょっとだらしない感じがしたけど、私を見つめていた瞳は包み込むような穏やかでとても優しい感じ。
もし、運命なんてものがあるならあの出会いがきっとそうなんだと思う。
だってあの日から私の胸の中には名前と顔しか知らないあの人の姿が焼き付いて離れなかったから。稟様………また会えますよね?

―数時間前…―
「はぁはぁはぁ………ふうー」
学校から駆け足で商店街まで来た私は、額から流れる汗をハンカチで拭き取りながら数回深呼吸をして乱れた息を整える。
ここは、光陽町でも大きな商店街の木漏れ日商店街だ。
大体近所の人は、この商店街で買い物を済ませれるほど品ぞろえは良い。
携帯を取り出し時間を確認すると何時もより少し遅いぐらいだった。
そう私はあの日から、ある事を夢見て淡い期待を胸に抱きながら私は毎日欠かさず必ずここに足を運んでいた。
一体ここに来るのはもう何回目だろうか……思い返しても分からないぐらいここには来ていた。
それでもまだ一回も、出会えてないんだけどね……う~~、で、でも諦めないもん!
「よし!今日こそは、会えるように頑張ろう!!」
筆記用具が入っている鞄をぎゅっと力強く握り気持ちを新たに夕暮れに染まった木漏れ日通りを私は一人歩く。

そして、行くところなんて決まってない私は気ままに色んな所に向かって歩を進めた。
学校の友達との誘いも断ってまで来るのはちょっと悪いとは思っている。でも私にはもっと大切な事が出来たから、もう一度会いたいって思ったから、そう考えるとじっとしてるなんて私には出来なかった。
確信があるわけじゃないけど、たぶんこの近くで住んでいるのならこの商店街に現れる可能性はそんなに悪くないよね?

あの人はあんなのが好きなんだろうなとかこう言うのも好きかもっと色々と思い描きながら色んな店をあっち行ったりこっち行ったり。
あまりにも来るものだから、何も買ってないのも関わらず私はすっかり商店街のお店の人たちの間ではちょっとした名物的な者になっていた。
そのせいで挨拶してくれる店員の伯父さんとかもいるぐらいだし。

「お、ツボミちゃん。今日も来てるね。愛しの彼には会えたかい?」
「え?も、もう伯父さん。彼なんかじゃないですよー」

伯父さんの軽口に私は、真っ赤になった。
きっと傍から見たら私は変な人だと思う。
名前と顔しか知らないあの人に合う為に、毎日来てるしね。
でも……それでも良いもん。顔と名前しか知らないあの人にもう一度会えるかもしれないから。

それから、約数時間後…
「ふう…ちょっと疲れちゃった」
体に疲労を感じ私は足を止めた。
思えば木漏れ日通りに来てから一時間近く歩き続けていたし、体も休みたがってるのだろう。
もう大分日も暮れてきているし…時間的にこれ以上遅くなるとお姉ちゃんが心配するかもしれないなー。
私は、少し休憩してから家に帰ろうと思って周りを見渡すと、近くに丁度休憩用の小さなベンチが目に付いた。
私は店の脇に設置してある自販売機でジュースを買って、休もうと考え自販機に近寄る。

「え…と何にしようかなー」
同年代より比較的背が小さい私は少し見上げる形で自販機を見つめて悩む。そして、やっぱり疲れた時は甘い物にしようと決めて財布からお金を出そうとした時、“ドン!”っと急に私の脇に衝撃が走った。
「きゃあ!?」
突然の事で驚いて、思わず悲鳴を上げてしまい財布を落としかけたけど、どうにか押さえてお金をばら撒かなくて済んだ。
私は、何だろう?と思い衝撃があった方に目を向けると私よりも更に小さな女の子が腕にウサギの人形をギュッと抱いて俯いていた。小さな肩が小刻みに震えていて、時折嗚咽の様な小さな声が聞こえる。
私は気になって声をかけた。
「どうしたの?」
「…ま」
「え?」
「…ママ、居ない」
「ママ? お母さん?」
もう一度私が聞くと、顔を上げた女の子は今にも溢れそうな潤んだ瞳をしていてそして関を切ったように大きく泣き喚き始めた。

「うわぁ~~~~~~~~~~~~~~~~ん!!」

あまりの大音量に私は思わず耳を塞いだ。
多分、迷子…なのかな?
おおよそ親と一緒に買い物に来ていてちょっと目を離した隙にこの子だけが逸れてしまったと言う事だろう。そう結論付けても女の子はしきりに泣きながらママ、ママと大声で何度も叫けぶ。
「えっとあの…その…」
何とか慰めようと私は子供に話しかけようとするけど、迷子の子供なんてあやした事無い私には何からしたらいいのか分からなかった。
焦る私は無意識に、周りの人に助けを求めようと視線を送らせたけど誰一人目を合わそうとしてくれなかった。
母親に自分はここにいるよと知らせるように、泣き喚く少女の声に向けるのは周りの人たちの奇異の視線だけ。私と目が合うと、慌てて目を逸らすだけだった。
…何で皆こんなに冷たいんだろうと、そう思ってしまう。
私がナンパされて困ってた時も誰も助けてくれなかった。
あの時の不安な気持ちを知っている。だから私は、この子を置いてどっか行こうなんて思わなかった。
私がこの子の親を見つけないと。そう、ぐっと気持ちを固めもう一度子供に目を向けた。
「泣きやんで。ね?大丈夫だから」
私は屈んで子供の肩に手を置き出来るだけ優しく声をかけた。
だけどずっと泣き喚くだけで一向に止んでくれなかった。
諦めず何度も何度も声をかけるけど私の言葉は聞こえてないのか、泣くだけだった。
最初はやる気だった私の声も段々も小さくなっていき、不安にかられるようになりちょっと泣きたくなってきた。
段々と子供に話す事も出来なくなってきて、私の目にも薄らと涙が浮かびあがってきた。
ううっ…

だけど、私の瞳からポロリと一粒の涙が流れた時、不意に頭にポンと大きな手を感じた。
「え?」
私は涙を制服の袖で拭い顔を上げると、そこには白い制服を着た男子学生が立っていた。
良く見るとお姉ちゃんと同じバーベナの制服。
あまり汚れてない所を見ると新入生かもしれない。
丁度夕陽を背にしているせいで薄暗く顔は上手く見えなかったけど、それでも口元は優しそうに微笑んでいるのが分かった。
「あ、あの……」
男性は、呆然とする私の頭をまるで不安な私を気遣うように優しく撫でてくれた。
何でだろう……この人に撫でられるだけでさっきまでの私の中の不安な気持ちは嘘のように消えていく。雰囲気と言うのだろうか懐かしい様な感じがしてひどく安心した。
「よく頑張ったね」
そう柔らかい口調で言って、この人は私の頭から手を離し片膝をついて泣いてる女の子と同じ目線に合わしゆっくりと話をかけた。
「どうしたんだい、迷子かい?」

ドクン!!

逆光で見えなかった顔が屈んだ途端ハッキリと見えた瞬間私の鼓動は高鳴った。
無造作に揃えた髪にちょっと釣り目の男性。だけど、女の子に話しかける声と雰囲気は優しさに溢れていた。
あの頃と変わらない優しいままの姿……忘れる事なんてありえなかった。
稟……さま?
私は一気に頬が熱くなってしまって思わず、稟さまの顔から視線を離せなかった。

「ぐすっ…行く」
「よし、じゃ一緒にお母さん探そうな。それで、君はどうする?」
急に声をかけられて私はハッとすると、目の前にはいつの間にか泣きやんだ子供と手を繋いだ稟さまが私に聞いてきた。
「どうした?」
「あ、いえ。何でもないです!」
あ、危なかった…
「今からこの子の母親を探しに行くけど、君はどうする?」
「え、あ、はい。わ、私もご一緒します!」
「そうか。じゃ、行こう」
「は、はい!」


そしてそれから暫く経ち空が暗みかけた頃に、どうにか女の子の母親は無事に見つかった。
どうやら、母親が買い物中でちょっと目を離した隙に子供と逸れてしまったようだ。
母親も心配してずっと探していたらしい。

「本当にすみません…何てお礼を言っていいか」
「いえ、気にしないでくさい。無事に見つかって良かったです」
「バイバイー。お姉ちゃん、お兄ちゃん!」
「バイバイ~」
「ああ、じゃあな。今度はママから逸れないようにしろよ」
そして、無事に再会できた手を繋ぎながら、二人は仲良く木漏れ日通りから去って行った。
私たちもそれを見えなくなるまで見送る。

そしてその後は、私たちも互いの家へ帰るべく木漏れ日通りの出入口まで稟さまの隣で私は並んで歩いていた。
やっと稟さまと二人っきりになった私は、思わず心が躍る。

「君って、この辺りじゃあまり見ない制服だね」
「そ、そうですか?」
「ああ、どこの学校。隣町かい?」
「はい…隣町です」
「あ、やっぱりか。でも態々ここまで来るなんて、他に何か用事があったのか」
「うっ…それはその…内緒です」

それを聞かれて誤魔化す私の心臓はドキドキと高鳴る。
貴方に会いに来てましたなんて言える訳ないよ。
結局緊張している私は終始稟さまの言葉に素っ気ない返事しか返せなかった。
返事が微妙な私に稟さまもちょっと複雑な表情をしてるし…最悪。
うー…折角稟さまに会えたんだから色々話したいのに、いざ面と向うと何話して良いのか分からないよ……
覚悟は決めていた筈なのに、胸が痛いぐらい高鳴って頭が真っ白になっちゃうよ。
一緒に歩いているだけでこんなにもドキドキしている。
話しかける事がままならない私は、ちらりと横目で稟さまの顔を覗き込む。

あー…稟さま、やっぱり恰好良い…

その凛々しい姿に思わずうっとりする私。…って駄目じゃない、見とれるだけじゃなくちゃんと話かけないと!!
でも…稟さま。私を見ても何も言ってくれないみたいだよね?
それってやっぱり私の事覚えてないって事なのかな……?
そう考えると少し残念…
すると、一緒に歩く稟さまの足が急に止まった。

「俺はこっちだけど、君の家はどっちだ?」
「え、あれ?」
散々悶々としてる間に、どうやら商店街の出入り口に着いてしまったらしい。
しかも、稟さまが指さす方は私の帰り道とは全くの逆の方角って事は……もしかしてここでお別れなの?そんな…
結局まともに話していない私は愕然とし大げさなぐらい肩を落として沈んだ表情になり、顔を伏せてしまう。
そんな私の沈んだ表情を見て、稟様はちょっと考える仕草をしてから私に声をかけてきた。
「…もう暗くなってきてるし良かったら、近くまで送ろうか?」
思いもよらない提案に私は内心歓喜の声を上げる。
「い、良いんですか?」
「ああ。迷子を捜していて結構時間がかかったからね。流石に一人じゃ危ないかもしれないし…最も君さえ良かったらだけど」
「も、もちろんです。わ、私、稟さまの事信頼してますから!!」
「そ、そう……ってあれ?君、今俺の名前を呼ばなかった」
「え」
余りの私の勢いに面を食らった表情をする稟さまだけど、それよりも自分の名前を呼ばれた事に関して驚いた表情になっていた。
「あれ?俺って君に名前教えたっけ?」
あ、やっぱり覚えてないんだ…
「い、いえ。言われてないです……」
「だったらなんで?何処かで会った事ある」
嫌な顔をしている訳ではなく稟様は本当に困惑してるみたいだった。
一度しか会ってない私の事なんて、覚えてないからしょうがないけどちょっとだけ残念だった。
「えっと……会ってます。一年ほど前に、駅前でしつこい男の人に声をかけられたのを助けてもらった事があるんです」
「……駅前?」
顎に手を当てて考える仕草をする稟さまだけど、やっぱり思いだせないのか申し訳なさそうな顔をした。
「えっと、ごめん……覚えてない」
「い、いいえ。覚えてないのも無理はないですから気にしないでください。でも私にとってはとっても嬉しかったんです。今も昔と変わらない優しいままの稟さまが現れて助けてくれて私、凄く嬉しかったんです。だから…私」
「ん?」
考えれば考えるほど溢れる思い、止められない気持ち、自分の中は稟さまで一杯だった。もうこの気持は止められなかった。

「私!稟さまの事好きです!!あの日からずっとずーと好きでした!!!」

「……え?」
顔をリンゴみたいに真っ赤にして、私の精一杯の言葉を大きな声で伝えた。
そのせいで、周りの注目を浴びてひそひそと声が聞こえる。
でも私の、耳には届いてなかった。
だって、私から男の子への初めての告白なんだもん。
他の事なんて気にしてる余裕なんて無かった。
…本当は、不安と恥ずかしさでここから逃げ出したい気持ちで一杯なんだけど、やっと会えた憧れの人だから私は逃げずに懸命に震える足を抑え稟さまの返事を待つ。

数秒?

数分?

どれだけ経ったか分からない。
感じる時間は長く短く不安と期待を駆り立てて、私の鼓動は激しく高鳴り静まらない。
稟さまの足音が私に向かってくるのを感じぎゅっと目を閉じる。
きっと私なんかじゃ相手にされないのは分かってるだけど……それでも……
そして、私の頭にポンと大きくて温かい感触が伝わった。
ゆっくりと目を開け見上げると、私の頭に差し延ばされた腕を伝い稟さまの顔が見えた。
ちょっと困ったようなでも嬉しそうに微笑み真剣な目で私を見つめてくれていた。
「その…有難う。君みたいな、可愛い子に慕われてるなんて凄く嬉しいよ」
「…はい」
「だけど、俺は君の事を何も知らないから。だからさ……友達からとかじゃ、駄目かい?」
事の成り行きを見守っていた通行人からは、稟さまの言葉に落胆した声が聞こえた。
一部からは、稟さまを罵倒する野次の声が聞こえたけど私にはそれだけでもとても嬉しかった。
この人は本当に優しくて誠実な人なんだって分かったから。
小さな私の思いを真摯に受け止めてくれたから。
それに、友達ならまた今度会える。
今度があるなら、まだまだチャンスはあるから……私は諦めない。
だって……本当に稟さまの事を好きだから!

「だ、駄目じゃないです。その…また会ってくれるんですよね?」
「もちろんさ。君…えっと、名前ってなんだっけ?」
「ツボミです」
「うん、ツボミちゃんさえ良かったら俺は構わないよ」
「はい!私頑張って素敵な女性になって稟さまの彼女になってみせますから!!」
「はは、うん。そうだね」
「はい!だから……覚悟してくださいね稟さま♪」
私を優しく見つめる稟さまの頬に、精一杯背伸びをしてチュッて触れるだけの軽いキスをした。
「えっ?……ツボミ…ちゃん?」
「えへへっ。それじゃ、今度は稟さまに会いに直接学校に会いに行きますね」
不意打ちのキスに思わず頬を抑え、目を白黒させて驚く稟さまに私はにっこりと微笑み大きく手を振りながら家へと走り去った。
そのまま全速力で家まで帰った私は、乱暴に靴を玄関に脱ぎ捨てて部屋へと向かいベットへとダイヴした。
きゃ~~~~♪どうしよう、私ったら告白までしてキスまでして大胆~~~♪
さっきの行動を思い出すと、全身真っ赤に染まるぐらい恥ずかしかったけどでもそれ以上に嬉しさが胸の中に一杯だった。

稟さまと、何時か恋人同士に……きゃあきゃあきゃあ♪

そのまま、暫く妄想する私が稟さまとちゃんと会う約束もしてなく連絡先すら聞いてない事に気づいたのは、部屋に入ってきたお姉ちゃんの声で我に返ってからの事だった。
う~~…、でも私頑張るもん!!
二度ある事は三度あるって言うんだから、それに学校も分かったし今度は直接行っちゃうもん!!!

気持ちを新たに稟に思いを馳せるツボミであった。
頑張れ、ツボミ。
きっとその思いは何時か報われる……筈だ!!

―そんなこんなでちょこっと後日談…―

つぼみと会った、次の日の朝。
何時ものように幼馴染の楓を連れて教室に入るなり稟が感じたのは、何時も以上に殺気を膨らませて放つクラスメート達の鋭い視線だった。
「?何だ…何があったんだ」
「さぁ?どうしたんでしょう…」
異変を感じる楓だが原因を知らないのか首を傾げる。
そんな二人に、面白そうな目をしながら近寄ってくる稟の悪友、樹が怪しくメガネを光らせていた。
「やぁ、楓ちゃんおはよう。そして稟さようなら」
「おい、来た早々何を言うんだ。勝手に俺を帰すな」
「いや、直ぐに理由は分かる事になるだろうけど。優しい俺様は友である稟に事実確認と共に最後の忠告を与えてあげようって思ってね」
「はぁ?何言って……」
相変わらず意味の分からない出だしをする樹に戸惑う稟を無視して話を進める。

「稟……昨日商店街で、見知らぬ少女に告白されたらしいのだけど…本当かい?」
「な、何?」
「え」

探る様な眼を向ける樹は、微妙に動揺する稟の反応に不気味に笑みを漏らした。
楓の方は、信じられないような眼をして呆然としていた。
そして噂が真実と確信した樹は今教室にある嫉妬と憎悪と言う名のガソリンに更に火を付けたのだった。

「その反応本当らしいね。全く稟も隅に置けないね。こんな可愛い幼馴染が居るにも関わらず、少女しかも神族で相当の美少女をゲットしようとするなんてね。」
「ゲットってお前…」
「いやいや、照れる事はないよ稟。答えは聞かなくても分かってるから、分かれ際にキスまですれば、一目瞭然だからね」
「な、何でそんなことまで知って!?………あ」

樹の誘いに乗り肯定してしまった稟の言葉が起爆剤となり、全てが真実と判断したクラスメート諸君は体中から一気に黒いオーラを焚き上がさせ教室を震わせていた。

「「「「「「「つ~~ち~~~み~~~~!!」」」」」」」
「うわぁ!?ちょっと待てお前ら!!!!!お、俺の話を……」

『問・答・無・用!!!!!!』

「り、稟くん!?」

ようやく我に返った楓の声が聞こえたが、稟は反論をする余裕もなくその場から走り去る事しか出来なかった。そして今日のバーべナの一現目は嫉妬に狂うクラスメートと稟の地獄の耐久レースとなった。
紅女子が止めてくれなければ、死んでいたと稟は後々に語ったのは言うまでもない。
しかし、放課後になり稟に会いにきたツボミと出会い噂の少女の可愛さを知り、更に状態が悪化する事になるのだが…それも、またもてる男の運命だろう。

~終わり~



***後書き***

ファンブックに記載されてる過去の話を呼んで思いついたSS。
実はこれって随分前に書いて没ってた物です。
先を何とか思いついたので、書き始めました。
ツボミならきっとこう行くだろうと思いやっちゃいました。
ま、ゲームでは自分でストーカーと問題発言してますからねー。
これぐらいはやるかな?と思って書きました。
少しでもツボミの可愛さに見入ってくれれば良いですね。w






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