家に帰ると夕食の準備をしているのだろうか、美味しそうな匂いがここまで通ってくる。
そして、パタパタと可愛らしい足音が聞こえそうな風に玄関まで出迎えに来てくれるシルファちゃんに俺は笑顔で答えた。
「お帰りなさいれす、ご主人さま。」
「ただいま、シルファちゃん。」
シルファちゃんがこの家に来るまでは、一人暮らし同然な生活だったのだが彼女が来てから一転。
艱難辛苦を乗り越え今では心を通わし一緒に居るのが当たり前な、メイドロボとしてではなく一人の女性としてなくてはならない存在となっていた。
ちょっとした感慨に浸りつつも家に上がろうとした俺だったが、目の前でシルファちゃんが物欲しそうに見つめてきていた。
恥ずかしそうに頬を染めながらも何かを必死に訴えている感じさえする。これは・・・もしかして?
「キスして欲しいの?」
顔を赤くなりながら、小さくコクッと頷いた。
俺も恥ずかしくなり鼻を掻きながらも、シルファちゃんに近づき朱に染まる頬にそっと手を添えた。
「ただいま、シルファちゃん」

ちゅっ、

優しいキスで、シルファちゃんの願いに応えた。
シルファちゃんの、やわらかい感触を感じながらしばらくそのままで過ごしそして、ゆっくりと離れる。
「もっとれす・・・ご主人さま」
だけどシルファちゃんは物足りないのかどこか恍惚とした表情で、キスのおねだりをしてきた。
その可愛さに、内心くらっと来ながら先ほどよりも強いキスで応える。
「ん・・」
キスの間に聞こえる、シルファちゃんの悩ましげな声に俺の男の本能が警鐘を鳴らしていたが、この甘美の時間から離れる事も出来ずにいた。
何よりもシルファちゃんとのキスは嫌いじゃないから。
どれ程時間が過ぎたか、ようやく唇を離した。

「ふぁ・・・ご主人様のキスらいすきれす」
先ほどよりも、恍惚とした妖艶さを写す表情で言われそのあまりの可愛さに、俺の理性のダムにヒビが入った気がした。
「シルファちゃん!」
理性の臨界点を突破し我慢が出来ずに、シルファちゃんを抱き締めようと腕を広げるが呆気なく逃げらてしまった。
あ、あれ?
その時の俺の顔はかなり情けない顔だっただろうと自分でも思ってしまう。
「らめれすよ、ご主人さま。ご飯が用意してあるのれすから、冷めちゃいます。」
小さく舌を出して、意地悪っぽく笑ってる。そんな・・・・
お預けを食らった俺はますます情けない顔をする。
そんな、俺の反応が嬉しいのか面白いのか“ぷぷぷぷっ”と笑っていた。そんな彼女の態度でさえも、可愛いと思ってしまう俺は心底彼女に惚れてる証拠だろう。
「そんな、顔しないれくらさい・・・・・・・・後れちゃんと、してあれますから」
と、俺の耳元で囁いてくれた。
色々・・
色々か・・・・・
「さ、ご主人さま。早く着替えて来てくらさい。お食事が冷めてしまいますから。」
と、小走りにキッチンに戻って行ったシルファちゃん。今の俺の顔は、きっと周りが呆れるぐらいニヤケているだろう。
こう言うのが幸せって言うんだろうな、うん。

ひとまず部屋に戻り私服に着替えてシルファちゃんの料理が待つリビングへと戻ってきた。
ここへ来た瞬間、食欲がそそる良い匂いがして俺のお腹は、ぐーぐーなり始める。
「良い匂いだね。今日のご飯は何かな?」
「今日はシチューにしました。最近、はら寒い日がつるいているのれちょうろ良いと思って。」
「へー。こりゃ旨そうだ。」
一般的なクリームシチューだが、具材も豊富でかなり旨そうだ。それ以外にも、サラダなんかもあり体の栄養のバランスもバッチリだ。流石シルファちゃんとと言うべきか。
「それじゃ、さっそくいただこうかな。いただきまーす。」
席に座り、手を合わせて食事を頂く。
シルファちゃんは俺の向かいの席に座っている。
俺としては、座るのは隣でも良いと思ったけど、そこが一番良いとの事だった。どうやらそこが食べてる俺の顔を一番良く見えるからお気に入りらしく先程からずっと頬に手を添えながらこっちを見ている。
何時もだが、食事をする時はこうやってじっと見られてる。
なんかそんなに見られてると食いづらいんだけどな・・・・・・・・

パクッ

「うん、とても美味しいよ。」
俺に褒められたのが、そんなに嬉しいのか顔が”ふにゃ~~♪”と蕩けた表情になっていた。
本当にお世辞無しで美味しい。
今思えば懐かしい思い出だが出会った当初の、生野菜や卵だけの食事の時と比べれば今は雲泥の差だろう。
料理だけに限らず、普段の生活態度に対してもそう言えるだろう。
しかし、本当にこれ上手いな。
もしかしたら家の母親以上なんじゃないかと思える程だ。

「ね?シルファちゃん。これ何か入れた。」
と、改めて聞くと別の方に俺の意見がシフトしたのかとたんに表情が暗くなる。
「も、もしかして何か口にあわなかったれすか?!」
「い、いや。そうゆうのじゃなくて、その・・・」
シルファちゃんの勢いに飲まれて即答できなかったが、
「いや、なんか滅茶苦茶美味しいから、なんか隠し味でも入れたのかなーて思って。」
「そうれすか・・・・良かった。」
なんとか絞り出すように、言えた事でシルファちゃんは満足したのか、ほっと胸をなで下ろす。
「より美味しくする為に、少しぶらんれーを混れてるのれすよ。調理方法も来栖川のサーバーにアクセスして、一番美味しくご主人さまに喜んれ貰えるレシピをロードしましたのれす。ぶらんれーもそんなに強くないのを使っているのれ、そんなにはきつくはないはずれす。」
えっへんと、胸を張っている。
へーそんなデータまで、来栖川グループは持っているのか流石だねー。



「ごちそうさまです。」
「はい、おそまつさまれす。」
シチューも結局全部完食し、満足げのイルファちゃん。
「ふう~、食べた食べた。」
少し無理して食い過ぎたかな?と、膨らんだお腹をさすりながらそんな事考えていた。
シルファちゃんも、“無理して全部食べなくても良かったれすよ?”と、言っているのがその顔はどこか嬉しそうだ。
だけど、つい箸が動いてしまうぐらい美味しかったのは本当だし、何より出された物を全部食べるとシルファちゃんが喜ぶのだ。それなら多少無理でも食べてしまおうと思うのが、男の性だろう。
これで、もし俺太ったら幸せ太りかな?とか考えみたり。

「ふふん~~」

シルファちゃんも、鼻歌を歌いながら洗い物をしていた。
そんなシルファちゃんを、リビングのテーブルからじーと見ている。
あーこうしてみると、本当に俺達新婚夫婦みたいだな。
シルファちゃんと結婚か・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いかん。顔が自然にニヤケてくる。
俺の変な視線が気になったのか、突然くるっとこっちを振り向いた。
「何、ららしなくにやけてるんれすかご主人さま?」
俺の端から見たら不気味(?)な笑みを変に思ったのかに、訝しげに聞いてきた。
まさか振り向かれるとは思ってなかったので少しびっくりした。
「へ?いや、その・・・・・ははははっ俺そんな変な顔してたかな?」
「はい。かなり不気味れしたよ。」
即答ですか。そうはっきり言われると少し凹むよ。
「いや、少し思ってね。」
「何をれすか?」
「えっと・・・」
これは言っていいのだろうか?
かなり、気恥しいんだけど。
「ん?」
口ごもってる俺に、?マークを付けたシルファちゃんがこっちを見ている。
「その・・・こーしてみると俺達新婚みたいだなーて思って。」
なんとか絞り出す様に告げた。
一瞬、言われたシルファちゃん本人も理解出来なくて、暫く呆然としていたのだが俺の言葉の意味する事がやっと理解出来たのか一気に頬を”ボッ”と真っ赤に染め上げた。
「な、ななななななな、なななななな、何言いてるれすか!?」
どもり方が半端ない。
そういう俺も、かなり心臓がバクバク鳴ってるのだが。
「「・・・・・・・・・・・・・・・」」
二人して顔を赤くして、押し黙ってる。
時折ちらちらとこっちを見るシルファちゃん。
少々気まずい雰囲気なのだが、この沈黙は互いを思い合う感じがしてどこか心地よくさせ感じていた。
「そ、それじゃ俺お風呂に入ってくるね。」
「は、はいれす。着替えも後れもっていきますのれ・・・」
「うん。お願いね。」

バタン・・・

貴明が居なくなり、リビングに一人残ったシルファは、どこか確かめる様にぽつりとつぶやく。
「新婚・・・・・・・・・お嫁さん・・・・・・・・・か」
まさか、自分のご主人さまからそんな言葉が出るとは思わなったシルファは、かなり困惑していた。
もちろんその意味も知っている。

”新婚”
――――結婚したばかりであること。――――
”お嫁さん”
――――愛する人と添い遂げた女の人を指す言葉――――

メイドロボである、自分が”結婚”と言う概念を持って良いかは知らないがそれでもこの世界で一番大切な人に、そう言われたのだ。嬉しくないはずがない。
「ふふっ」
そう考えると自然に微笑みがこみ上げてくる。
何時もの、意地悪な笑みではなくより自然で柔らかい優しい微笑みだった。

しかし、昔の自分を考えると今の自分は少し信じられない気さえもしていた。
只、ひたすらに周りを拒絶し”自分”と言う殻にずっと閉じこもってた時。
当時はそれが一番良い、それが一番当たり前だと思ってた。・・・いや、思いこもうとしていた”欠陥品”である自分にとっては。
だけど、研究所の人とイルファに無理やりここに送りつけられた時、気づいた。
こんなに人と触れ合うのはとても嬉しくて、とても温かい事なんだって。
いつでも、どんな時でも、何をしても優しく微笑んで包んでくれるそんな人が居るなんて知らなかったから。
それがどれだけ幸せなんだって事も。
「ご主人さまには感謝してもしきれないれすれすね。」



「さてと、ご主人さまの寝巻き着を用意しないといけないれすね。」
とりあえず、今は貴明の服を用意しないといけなかった。
(以外にご主人さまは、お風呂は長いから多少の時間は大丈夫らけろ、お風呂から出る前に用意しておかないとご主人さまのめいろ失格らもんね)

「あ、そうれす・・・・ぷぷっ」
しかし突然何かを思いついたのか、唇に指を当ててどこか意地悪そうな顔をし始めた。

「ふー・・・・」
肩までお湯につかり、ゆったりとしている。
このお湯の加減もまた絶妙だ。
心地よい感触に揺られながら、ふとさっきの事を思う、
“新婚さんみたいだなーって・・・”
今思うと、顔から火が出そうなぐらい恥ずかしい台詞をよく平然と言ったと思う。
タマ姉あたりに聞かれてたら、まず間違いなくからかわれるだろう。
でも、シルファちゃんの事を考えると遂そう思ってしまい色々と、自分の中で欲望が湧き出てくる。
シルファちゃんの全てを“俺の物”にしたと思うのは俺の我儘なのだろうか。
淫らで危険なぐらいの独占欲が湧きでてくるそんな考えを振り払うため勢いよく湯船の中に潜り頭にまで浸かった。
「ぶくぶくぶくっ・・・・」

がちゃ

「ご主人さま。」
「うわぁっと!?」
急に聞こえたシルファちゃんの声に驚き危うく風呂で溺れる所だった。
「ご主人さま。着替えここに置いておくれすよ。」
「あ、うん。ありがとう。」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どうしたのシルファちゃん?」
何時もなら着替えを置いたら、出て行くのに今日はなぜか出て行く気配がなかった。
それが、気になり聞いてみたが、しばらくは無言だった。
そして意を決したように言うシルファちゃん。

「あ、あの!ご主人さま、わ、私も一緒に入ってもいいれすか?」
「は、はい!?」
シルファちゃんの申し出に俺は頭がパニくる。
シルファちゃんとお風呂・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はっ!?今、いけない事を妄想した気がする。
「だ、だめだって!!」
「ろうしてれすか・・・」
その申し出に断る俺に、残念そうな声で返す。
なんでかって、今はさっきの妄想で下半身が少し、やばいし何より一緒にお風呂なんて入ったらその・・・・我慢なんて出来ないかもしれない。
「やっぱりシルファの事嫌いなんれすね・・・・」
「はい?」
なんでそっちの方に答えが行きつくかな。
「珊瑚様達とは入った事あるのに、私らけのけものなんて・・・・」
ちょ!?どうしてその事まで知ってるんのですか!!
「・・・・シルファの事夫婦みたいって言ってたのに・・・・やっぱりさっきの言葉は嘘らったんれすね。」

ドキッ

その言葉に俺の心は高鳴る。
いやまー咄嗟に出た言葉だったけど決してウソじゃない。
「いいれす。所詮欠陥品めいろろぼは1人寂しく寝るのがお似合いなのれす。」
扉越しでも分かるぐらい全身に哀愁を漂わせながら出ていこうとするシルファちゃんを、無視している訳にもいかず結局俺は彼女の要求を飲むしかなかった。
「シルファちゃん・・・その、は、裸じゃないなら入ってもいいよ。」
少しだけ境界線を引く事を忘れずに。

「本当れすか!!」
突然風呂の扉が開かれ、嬉しそうな顔をするシルファちゃんの急な態度の変化に唖然としながらも、首を縦にコクコクと振った。
「やったてれす。ご主人さまと初めてのお風呂れす」
俺とお風呂を入れるのがそんなに嬉しいのか、全身で喜びを表現している。
人間ここまで喜べれたら嬉しいだろうなと思う。
見てるこっちはかなり恥ずかしいけど。
そんなに、俺とお風呂に入れるのが嬉しいのかな。




「ご主人さま、力加減はこれれ良いれすか?」
「うん。気持ちいいよ。」

ゴシゴシゴシ

程よい力加減で俺の背中を洗ってくれる。
ちなみに、シルファちゃんの恰好はバスタオルを巻いただけの格好だ。
確かに裸じゃないが・・・・・逆にエロく見えるのは気のせいではないだろう。
「他に痒いところとかありますか?」
「うんと、脇のあたりかな。」
「はいれす。」

ゴシゴシゴシ

背中、腕、腰回りや首筋、頭なんかも洗ってもらった。
人に体を洗ってもらうのは、なかなか気恥しいものだが心地は良かった。
なにか癖になりそうだ。
たまには、洗ってもらうのも良いかもしれない。
「それじゃ、前も洗うれすよ。」
そう今度は前・・・・
「え?え??前ってまさか・・・」
「それじゃ失礼するれすよ。」
「あっ・・・」
前に回り俺の男の部分を大切に大事に洗う。
しかも、スポンジではなく自分の手を使ってだ。
石鹸の滑らかさとシルファちゃんの手の感触で俺の部分は、かなり敏感になっていた。
正直かなり気持ちいい。
咄嗟の事だったので、止められなかったが今の俺は、この感触の前に抗えようも無かった。
それに一回お預けをくらっているのだ。
その上でこの感触、俺の欲望はもう止められそうにない。
「シルファちゃん、俺もう・・・・」
「はい。ご主人さま・・・」
体の力を抜き今度こそ俺を受け入れてようとしてくれていた。

「シルファちゃん!」
そんなシルファちゃんに俺は我慢など出来るはずもなく覆いかぶさった。
完全に俺が押し倒してる体制になって巻いてるバスタオルも、はだけシルファちゃんの美しい体が覗いている。
あまりの美しさに思わず生唾を飲み込み、心の中に湧き躍る欲望のままに動こうとする俺を僅かに残ってる理性が踏みとどめさせた。

このまま滅茶苦茶に犯して汚したい。

白い肌も。
金色の髪も。
全て。
欲望と理性が鬩ぎ合い躊躇する、俺の心中を知ってか知らずかシルファちゃんは俺だけに見せる優しい笑顔を浮かべそっと抱きしめてくれた。
「らいじょぶれす。シルファはご主人さま専属めいどろぼなんれすから、何をしても良いのれすよ。」
「シルファちゃん・・・」
「ろんな、ご主人さまれもシルファのご主人さまは、“貴明さん”らけれすから。何も我慢しないれ。貴明さんが喜んれくれるのがシルファの幸せなんれすから」
優しく俺の顔を撫でてくれる。
それに、シルファちゃんが俺の事を『貴明さん』と名で呼ぶのは、肌を重ねる時の暗黙の了解。
何時もここぞと言う時に渋る可能性がある俺を、湧き立たせる為のシルファちゃん必殺の言葉。
シルファちゃんの気持ちに俺も覚悟が決まり彼女の事を呼び捨てで呼び体を重ねた。
「シルファ・・・ありがとう。愛してるよ」

チュンチュン・・・・

「ん・・・」
「おはようございます。ご主人さま。」
「おはよう、シルファちゃん。」
朝、起きると目の前にちゃんとメイド服を着たシルファちゃんの姿があった。
昨日あんなにも遅くまで愛し合ったまま一緒のベットに寝ていたと言うのに、いつの間にか着替え何時もの朝の勤めを果たしてるのが流石と言うか何と言うか。
まさに、メイドの鑑。
しかし、俺はまだかなり眠かった・・・・
「ご主人さま、まら眠むたそうれすね。」
「うん、眠い・・・」
未だ覚醒してない頭で答える。
それでも、体はシルファちゃんを求めているのか眠むそうながらもシルファちゃんの腕を掴み体を抱きよせベットに誘った。
「あ・・・らめれすよ。ご主人さま、あんまりゆっくりしてると遅刻してしまいますれすよ。」
「もう少しだけ、このままで居るだけだから」
「もう、しょうがないれすね」
ああ、心地良いな・・・・こんな時がいつまでも続けば良いんだけど。
いつもなら、このまま幸福を噛みしめつつゆったりと過ごすのだが、今日は少し違っていた。


ダダダダダダダダダダダダダッ

この家には、俺とシルファちゃんしか居ないのに聞こえるはずのない足音が聞こえてくる。
そして、

バン!

「おっはよう~~~~~~♪ダ~~~リン☆愛しのミルファちゃんが起こしにきたよ・・・・・・・・」
勢いよく開け放たれた扉から聞こえてきたのは元気一杯なミルファちゃんの声だった。
が、その言葉も途中で途切れ俺とシルファちゃんを交互に見ている。
その眼は見開き、まさに遠距離恋愛をしている彼女が態々彼氏の家に来たのに、知らない女と寝てたのを目撃した時のぐらいの悲惨な目をしていた。
言いえて妙だが、間違ってはないと思う。

あ、やばい。俺は本能的にそう感じた。
理由はないが、修羅場になる。そう確信できた。
すでに、眠気など完全に吹っ飛んでいる。
そしてその予感が的中したかのようにミルファちゃんが叫ぶ。
「ちょ!?このひっきー朝からダーリンになにしてんのよーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「何って、ご奉仕れすよ。シルファはご主人さま専用のめいろろぼなんれすから当たり前のことれす」
俺を胸に抱きながら、見せつける様に告げられ流石にこれにはカチンと来たのか、ミルファちゃんの怒りの沸点は更に上昇した。
「ひっきーばっかりずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
まさに駄々をこねる子供のようだ。
そんなミルファちゃんに吐き捨てる様に言う。
「めいろじゃない、ミルミルはお呼びじゃないれす。とっとと学校へ行って少しはおぽんちな頭をまともにしてきたら良いれすよ。」
うわぁ・・・・シルファちゃんそれ姉に対して言う台詞じゃないよね。
ここまで言われては、ミルファちゃんの性格からして黙ってる事なんて出来はしないだろう。
今朝は血を見るかもしれない。
そう覚悟した俺だが、ミルファちゃんの方を見ると、
「うー・・・・・・・」
下唇を噛み、鬼気迫る顔でこっちを見ていたが何時ものように食ってかかってこなかった。
何かを考えている感じだ。
そして何かを決心したのか、意を決したように高らかに告げた。
「じゃあたしも、今日からダーリンのメイドになるそう決めた!今決めた!!絶対決めた!!!」
この発言には、俺もシルファちゃんも意外だったのか茫然としてたが、先に立ち直ったシルファちゃんが食ってかかる。
「な、何いってるれすか!?ご主人さまのめいろはあたしらけれ十分れす!!あーぱーミルミルはお呼びじゃないれす!!!!」
「そう決めるのは、シルファじゃなくてダーリンでしょ!!!それに私だって前々からダーリン専属のメイドになるってずっと前から決めてたんだから寝取るなこの泥棒猫!!!!!!」
二人の視線に火花が散り、散々にらみ合った挙句遂にこっちに矛先が向いてきた。
その眼は、まさにメデューサの目の如く俺の動きを止めていた。

「ご主人さま!ろうするんれすか!!」
「ダーリン!どうにするの!!」

「は、ははははっ・・・・」
どっちを選んでも、血を見るのは明らか。
こうなったら、もう笑うしかなかった。

結局、結論を出せない情けない俺に対して二人の怒りは治まりを知らず、しまいにゃ俺の存在を忘れたみたいに口喧嘩を広げてしまっていた。
物を破壊する事はなかったのだが、膨大な知識がある文だけ口から出てくる言葉に際限がない。
学校に来ない俺を心配した珊瑚ちゃん達がイルファさんに連絡してどうにかこの場はおさまったけどミルファちゃんは、未だ納得してない様子だった。
・・・・・・・・・・・・本当どうしようね、この展開?
まだまだ続くこの問題に俺は頭を抱えていた。
どうやら俺は早々簡単に大団円には迎えれそうにはないと痛感していた。

~End~





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